政策や提案

2005年 2月2日

熊本駅周辺整備と街づくりに関する日本共産党の提言 その2


  
熊本駅周辺整備と街づくりに関する日本共産党の提言 その2

熊本県知事  潮谷義子  様
熊本市長   幸山政史  様

駅周辺整備に関する県・市協定の「中間報告」への見解
過大な計画でなく県民市民合意にもとづく現実的かつ魅力的な計画に



                  日本共産党熊本県委員会
                   委員長 久保山 啓介
                  日本共産党熊本県議会議員
                       松岡 徹
                  日本共産党熊本地区委員会
                   委員長 山 本 伸 裕
                  日本共産党熊本市議団
                       益田 牧子
                       重松 孝文
                       上野 美恵子

1、はじめに
 私ども日本共産党は、昨年11月、潮谷義子県知事ならびに幸山政史熊本市長に対して、「駅周辺整備に関する提言 その1」を申し入れするとともに、「森と水の都・くまもとの表玄関にふさわしい整備のために、県民・市民の英知結集」を呼びかけました。その中で、@熊本駅とその周辺の位置づけを明確に、A駅前は全国に誇れる「森と水の都」熊本にふさわしいものに、B将来を見据えた交通結節機能の強化を、Cハコモノよりもソフト面での取り組みを急ぐとき、D県民・市民総参加でまちづくり推進などの方向を示しました。
 その後、県・市による駅周辺整備に関する見直しの「検討状況中間報告」発表が行われました。この「中間報告」にもとづく論議を経て、3月までに最終的な協定が締結されるとのことですので、最小限の見解の表明と提言をします。


2、「中間報告」の基本的な問題点
 中間報告を検討してみますと、やはり、「提言その1」で指摘した問題点が、大部分そのまま未解決となっています。そこであらためて、基本的な問題点を指摘せざるを得ません。
ひとつは、あくまで「副都心構想」にこだわっているため、必要以上に盛りだくさんになっていることです。
 2つ目は、県と市の役割分担が強調されて、統一性・一体性にかける結果となっていることです(パークステーションと東A地区再開発との関連など)。
 3つ目は、県民・市民の声を十分汲み取る努力をしていないために、東A地区再開発ビル計画のように独断専行的なものとなっていることです。
 最終的な県市協定をまとめるに当りましては、以上3点についての真剣な検討を求めたいと存じます。それでは、個別具体的に検証してみたいと思います。


3、駅前広場と東A地区整備および駅舎等のあり方について
  中間報告では、駅前・駅周辺の役割・機能をどのように見ているのでしょうか。
@「九州・熊本の情報発信の場」として、「商業・業務および情報発信・交流の拠点」「九州全域の行政・業務集積」「教育施設の集積と文化発信の場」「熊本・九州全体の情報発信の場」

A「新しい都市生活を想像する場」として、「森の都の玄関口機能」「新しい生活文化創造」「新しい都市型住宅の提供」

B「多種多様な人々が交流し情報発信する場」として、「交流拠点の場」「交通結節機能」「サービス拠点機能」などが提案・構想されています。

「森の都の玄関口機能」の具体化として、駅前広場「パークステーション構想」など部分的には賛同できるものもありますが、全体として大風呂敷を広げているといわざるを得ません。なぜそうなるのでしょうか。駅周辺整備だけの豪華さ・派手さで福岡や鹿児島と競争しようとしているためとしか考えられません。
 この問題を解決するためには、新幹線開通後の熊本駅周辺と中心市街地の役割分担と関連、さらには駅と都市圏全体および県下の観光地などとの関係を明確にしなければならないと考えます。熊本の場合、駅と中心部ならびに主要な観光地が相当はなれていることもあって、駅前・周辺はあくまで表玄関の役割が主たるものです。そのことを忘れて、駅周辺に商業も業務も行政も情報も、さらに教育・文化についてまでも拠点の役割を果たさせようとしているために、現実離れしてしまうのではないでしょうか。
 無理をせず、リアルに客観的に駅周辺の役割を考えれば、
まず第1に、熊本を訪れ駅に降り立った人が『熊本らしさ』と『安らぎ』を感じ、県民市民が誇りを持てるような熊本の表玄関にふさわしいものにすること、
第2に、交通結節機能、とくに中心市街地との接続、阿蘇を始めとする観光地との接続を強化し、スムーズに目的地に移動できるようにすること、
第3に、駅周辺の住民、特に高齢者・障害者が暮らしやすい環境をつくること、
第4に、将来の発展方向を見据えながら現実的かつ魅力的な計画にすること
などをしっかりとふまえることではないでしょうか。

 また、熊本は全国に誇れる「地下水と緑」、「歴史・文化」、「観光資源」「健康・福祉のマンパワー」を有し、全国有数の「農業県」であります。これらの魅力に磨きをかけ、充実・発展させることなどに系統的に取り組んでいくことなどがあげられます。熊本都市圏については、郊外膨張型都市形成を食い止め、中心市街地の都市機能を充実し活性化を図るなどバランスのとれた都市づくりをすすめることが重要です。
 以上の点を踏まえて、駅前広場、東A地区、駅ビルについて検討してみます。

〔駅前広場について〕
  駅前広場については、@緑の広場・パークステーション、A交通結節機能強化の2点が求められています。@については現在提案されている構想をもう少し煮詰めて、同じ『緑と水』の広場でも、ひと目で熊本らしさを実感できるものにする工夫が必要です。Aについては、電車、バス、タクシー、自転車、歩行の役割と結節方法を検討する余地があります。とくに、中心市街地との結節の軸は何にするのか。観光地との結節は何にするのか、住宅地との結節は何にするのか、明確にしなければなりません。その点で、やはり、中心部との移動は電車を軸にして、中心市街地と駅の間を往復する2両連結超低床電車を走らせ、ひと目で中心部行きの電車とわかるようにするなどの工夫も必要でしょう。そのほかは主として観光地とはバスとタクシー(レンタカー)、住宅地とはバス・電車(長嶺・沼山津方面への延伸も検討すべき)で結ぶようにすべきでしょう。

〔東A地区について〕
 駅を降りて真正面に当る東A地区について、私たちは「提言その1」で「駅前広場と結んで、森と水の都」を象徴する地域とすべきと提案していましたが、中間報告で「図書情報センターを中核とした再開発ビルを建設する」との方向が示されましたので、これに絞って検証したいと思います。
 民間の組合施行による再開発ビル計画が行き詰まり、市の直接施行となったにもかかわらず、あくまで「再開発ビル」にこだわる理由が理解できません。「図書情報センター」という図書館を中核としたビルにするというのですからなおさらです。なぜそのようになるのでしょうか。いくつか問題点を指摘したいと思います。

 ―求められる市民的論議と合意形成の努力―
この問題を考える上で大事な点の第1は、民間主体から市施行となった時点で、行き詰まりの原因を市民に明らかにして、市としての活用策を原点から市民的論議を通じて明確にすることです。ところが、実際には肝心なことは市民にはまったく知らされず、いつの間にか図書情報センターに決定してしまってから発表されました。現在素案が示され市民的論議が始まっている『自治基本条例案』の趣旨にも反するのではないでしょうか。市長は「それでは新幹線開通まで間に合わない」といいますが、あわててつくって後で後悔するようなことにでも取り返しがつきません。市民の意見がまったく反映されていないために、私どもが実施した「緊急百人アンケート」でも「図書館がいい」という市民は一人もいませんでした。逆に「ほかに適切なものがあるのでは」「財政が心配」をあわせると8割を超えました。このように、「駅前に図書館」ということについてはまったく市民的合意が形成されていないことをふまえ、改めて原点からの論議が求められています。

 ―「駅前に図書館ありき」で良いのでしょうかー
 大事な点の第2は、図書館の場所として駅前がいいのか、それともほかの場所がいいのか、さらにそもそも二つ目の市立図書館が必要なのか、必要とすればどのようなものか等々について十分な検証をすることです。中間報告では、「駅前に求められる公共施設の役割・機能」として、@賑わい作りに資するため、多くの人を集め滞留させる役割、A副都心ならではの更なる魅力と活力創出するため、文化・交流・情報発信機能、B勉学やビジネス等に役立つ幅広い分野の情報・資料の提供を行う機能をあげ、「現図書館は、閲覧、書庫スペースが狭く、資料の体系的保存に支障があり、公共交通の利便性が悪く、駐車スペースも手狭である」(図書館検討委員会の答申)ことから、駅前に図書館を建設すればこうした問題がすべて解決できると結論付けています。
 こうしてみると、「駅前図書館ありき」でスタートしていることが手に取るように見てとれます。まず、第1に、駅前に建物(再開発ビル)が必要ということが前提となっていることが問題です。パークステーションをかかげるのであれば、この地区まで公園として広げ、その先にある坪井川・白川と結んでこそ、それにふさわしくなると考えるのが当然ではないでしょうか。第2に、3つの機能・役割を掲げながら、「熊本を訪れて駅に降り立つ人々(県内外、外国の人々)を心をこめて熊本らしく歓迎する場」としての役割、つまり最も大事な主要な表玄関としての役割機能が欠けていることです。逆に言えば、中間報告で示された3つの役割・機能は、駅前でなく、中心市街地に大半が備わっているものであり、わざわざ駅前にもってくる必要はないのです。
 普通の感覚で考えれば、図書館が必要だとしても、駅前でなく、中心市街地にあったほうがいいと思うのではないでしょうか。したがって、私たちは、図書館検討委員会が指摘したような「多くの市民が利用しやすくするために公共交通の利便性がよい場所に」「閲覧・スペースを広くすること」「現図書館では資料保存が限界にあること」「情報機能がニーズに対応できていないこと」を解決するために、現市立図書館の機能を補完する第2図書館は、産業文化会館の2階から5階の一定部分を改修すれば十分対応できると現実的提案をしているのです。産業文化会館は中心市街地の中でも一等地にありながら、ホール・会議室以外の部分はその場所にふさわしく十分に活用されておらず、利活用のあり方が再三指摘されている施設です。ここを活用すれば、新市街・辛島町・花畑町・桜町一帯(いわゆる南地区)の活性化に一定の貢献をすることはもちろん、図書館利用の利便性も飛躍的に向上するでしょう。駅前と比べても数倍の利用になることは火を見るより明らかです。また、合同庁舎の移転で痛手をこうむる南地区の再生にも役立つのではないでしょうか。

 ―過大な財政負担の問題―
 東A地区を考える上で大事な3点目は、財政負担の問題です。当初、この地区の再開発がスタートする際には、公共施設の入居は重視されておらず、たいしたことは考えられていませんでした。その後、キーテナント誘致がうまくいかないことから、まず公共施設を導入することで誘致を促進しようとして50億円程度の計画で進められてきた経緯があります。それでも誘致できず行き詰まったために、市の直接施行となったわけです。その結果、事業費も120億円(用地買収費として約40億円、再開発ビル建設費として約80億円)にいっきに膨らんでしまいました。市財政が中核市の中でも依然として最悪の水準を脱しておらず、児童育成クラブやさくらカードなど新たな負担増をもとめ、学校図書の充足率が九州の県庁所在市中最悪であるにもかかわらず予算を減額するなど、財政難を理由に市民に我慢を強いているとき、こうした分野にだけ突出した財政支出をするのであれば、よほどの理由がなければなりません。ところが費用対効果さえ検証されていないではありませんか。産業文化会館の改修であれば、わずか数億円で可能なのです。現図書館を補完する第2図書館を駅前に建設すれば、将来にわたって重大な問題が生じることになります。あと20年近くたてば現在大江にある市立図書館の立替問題が迫られます。第2図書館だけでは当然蔵書機能等の不足が生じますので、やはり数十億かけて建設せざるを得ないでしょう。さらに4〜50年後に今度は駅前図書館も建て替えざるを得なくなるでしょう。このように20数年おきに交互に立て替え続けることになります。維持管理も2倍かかることになります。しかし、産文会館の改修方式にしておけば、市立図書館立替時期と産文会館の立替時期はほぼ一致しますので、本格的な市立図書館の建設にむけて腰をすえて検討することが出来ます。このやり方であれば、当然市民の理解も得ることが可能だと存じます。どちらが合理的か明白ではないでしょうか。なお、新設される合同庁舎内に「500名規模のホール」が地域住民から要望されていますが、それが実現可能であれば、図書情報センターに併設予定の「多目的ホール」も必要なくなるのではないでしょうか。

〔駅舎・駅ビルならびに高架下について〕
  中間報告によれば、「駅舎のデザインコンセプト」案を公募することにしていますが、果たしてデザインだけでいいのでしょうか。表玄関ということで考えれば、駅舎・駅前はまさに一体のものです。駅舎・駅ビルおよび駅に近接した高架下については、デザインはもとより、どのような役割・機能が求められるのか、そのなかに公共施設・あるいは準公共的な施設は必要ないのか、地域住民が気軽に活用できる商業施設も配置できないのか、等々の検討が必要ではないでしょうか。とくに駅舎が西側に移動することもあって、ゼロ番ホーム周辺(ゼロ番地区)はかなり広範な活用策が検討できる場所ともなります。東A地区で残留を希望している地権者・事業者についても駅ビルや高架下、あるいはゼロ番地区に移動していただければ効果的ではないでしょうか。最近、突然JRホテルがオープンしましたが、ここは駅前広場とゼロ番地区を結ぶきわめて重要な区域ですので、もっと行政や地域の関係者の意見を聞いて慎重に計画を進めるべきであったと考えます。もちろんここの事業主体はJRとなりますので、JRの意思を尊重するのは当然ですが、県民・市民の共通の財産でもあります。十分な検討の機会を求めるものであります。


4、駅周辺と中心市街地・市全域との役割分担・活性化について
 最初に述べたように駅周辺に過大な役割・機能をもとめるのではなく、熊本都市圏の都心として都市機能がそれなりに充実した中心市街地を背後に抱えているわけですから、拠点機能はそこに譲り、駅周辺は「表玄関」としての役割を主体にして、そのほかの機能は最小限にすべきです。そして、一刻も早く中心部への移動が出来るようにすべきではないでしょうか。
 そこで問題は中心部がその受け皿としての役割が果たせるようになっているかという検証をしなければなりません。しかるに現時点で最も懸念されるのが郊外への超大型店の出店ラッシュであります。約3万平方メートルの「ユメタウン光の森」の出店等に直撃され中心部の人通りが12・5%も減少(この年の春に高齢者・障害者が気軽にまちにでかける誘因となっていたさくらカードのプリペイド方式による有料化も一定のマイナス要因)しました。今後、嘉島に今秋オープン予定の6万平方メートル近い「ダイヤモンドシテイー」、さらに空港インター近くへの「イオン系」大型店、近見の県農業試験場跡地への出店もそれぞれ数万平方メートルといわれています。これらがすべて予定通り出店すれば、中心部の人通りは3割を超える減少が予測されます。そうすれば、まず商業分野が直撃され、百貨店さえ存在が危ぶまれることになるでしょう。それに続いて業務機能まで縮小に向かい、都市としての機能がすべての分野で衰退し、文化や治安などの分野にまで悪しき影響が広がり、まさにすみづらい都市になってしまいます。これでは、福岡への「ストロー効果」どころか、新幹線が開通する前に、「郊外へのストロー効果」で活力が吸い取られてしまうことになりかねません。幸山市長はことあるごとに「新幹線開通までに間に合わない」と危機感を訴えていますが、今ある危機はまさに「急速な郊外化による中心部の疲弊」であります。本市の心臓部に当る中心部が疲弊すれば、駅前どころではなくなります。したがって、今、緊急になすべきことは、県と市が商工会議所や商店街はもちろんのこと、各界各分野の皆さんと力を合わせて郊外への出店攻勢に歯止めをかけることではないでしょうか。その点から考えるとき、県有地である農業試験場跡地にわざわざ県外資本の進出を認めるというのは県民の願いを裏切ることになります。ホテル・キャッスルやニュースカイホテルなど主要なホテルを始め商工会議所等から県外資本の出店を中止してほしいといった要望が出ているのも当然です。いまからでも遅くありません。直ちに中止していただきたいと存じます。
 同時に、いま一番力を入れて磨きをかけるべき熊本の魅力は何か、はっきりさせて力を集中することが求められます。県全体を考えれば、なんといっても全国有数の農業県という点と温泉つきの豊かな自然環境にあり、熊本市としてはそれを背後に持っていることと、地下水・緑、歴史・文化、さらに医療・福祉環境に恵まれていることです。歴史や環境については魅力を高める努力がはじめられていますが、そのほかの点はまだこれからといって差し支えないと思います。とくに農業県としての魅力を高め、訪れた人々に実感していただくためには、食文化でさらに磨きをかけることが求められています。もうひとつは、どこにも負けない健康づくりの拠点都市として役割を発揮させることではないでしょうか。「きれいな水と空気、安全な食料、充実した支援体制のもとで、安心して生み育て、高齢になっても健康に過ごせる都市」「周りには少し足を伸ばせば毎日でも入れる充実した温泉」こうした魅力がさらに豊かになれば、「日本一暮らしやすい都市」として誇ることが出来、だれもが「住んでみたいまち」あるいは「一度は訪れてみたいまち」「しばらく暮らしてみたいまち」になるのはまちがいありません。しかし、現実にはそれに逆行する施策―「赤ちゃんに優しい病院」市立産院の廃止などが進められていることは残念でなりません。一刻も早く改めて、「日本一健康に暮らせるまち」を目指して関係機関・市民の協働が推進されることを願っています。


5、駅周辺の景観整備について
 中間報告によれば、「まちなみ形成軸およびまちなみ形成ゾーン」を設定し、「民間開発等にあわせたアメニテイー空間の創出やまちなみ景観形成を誘導する」ことになっています。そのこと自体に異論はありませんが、これまでも熊本市は景観条例を制定しながら、熊本城周辺の高さ制限など自らそれを踏みにじって、お城周辺の魅力を台無しにしてきました。そういう反省の上に立つとともに、新たな景観整備に関する法律の趣旨を生かして、景観保全条例の充実と、駅周辺に関する指針を策定しなければ、実効あるものとはなりません。その点では、ヨーロッパの町並みを守る工夫と努力に大いに学ぶことが求められています。高さ制限だけでなく、色やデザインについても、さすが熊本、「水とみどりのまち」といわれるだけのことはあると評価される町並みを形成できるようにしなければなりません。ほかの都市のように、サラ金等の広告が目立つ駅前であってはなりません。そのためにも市民的な合意形成に今から取り組まなくてはならないと考えます。


6、駅周辺・沿線住民の暮らしと環境について
 駅西土地区画整理事業地区においては、先買いや新幹線用地買収により、すでに3分の一の住民が転出しています。そのために地域住民を対象に営業していた商店、米屋、八百屋、食堂、酒屋などでは、お客の減少、売り上げ減に直面し、厳しい経営状況に陥っています。市に対して、地元からも陳情が行われていますが、「営業補償はできない。既存の融資制度で対応する」との回答にとどまっています。区画整理が終了するまで今後10年あまりの年数が見込まれているわけですから、従来型の対応では営業継続は不可能です。春日地区の場合、高齢化が急速に進んでおり、高齢者の暮らしを支えるこうした商店は必要不可欠なものばかりです。県・市においては、営業実態を具体的に把握し、区画整理事業による減収部分については補償するのは当然です。また融資については、無担保・無利子だけでなく、返還時期も事業終了後とするなどの配慮が求められます。
 市内を通過する新幹線は、川尻〜上熊本間においては、住宅地や教育施設のすぐ近くを通るなど騒音・振動などの環境問題が懸念されます。すでに開通した八代〜鹿児島間においては、事前の環境アセスメントに比較して、基準オーバーの箇所も随所に見られます。熊本市域においては、これらの教訓をいかし、事前の環境対策が強く求められています。防音壁の設置や緩衝地帯など思い切った対応を取られることを要望します。なお、新幹線・在来線の工事に伴って、移転等を余儀なくされる住民・業者が困ることのないように、適切な補償や代替地の確保などに努めていただくことも要望しておきます。


7、新幹線関連工事による地元経済の振興について
 新幹線と駅周辺整備に要する事業費は、今日の県・市の財政状況からすれば過大なものとなっています。東A地区再開発を始め、節約が可能なところは最大限の配慮をして節約に努めなければなりません。連続立体交差事業では県が550億円、うち熊本市負担が77億円、駅西土地区画整理事業では市が282億円、東A地区再開発では市が120億円、合同庁舎用地取得費で市が31億円、熊本市区間の新幹線建設費県負担が440億円、うち市負担44億円、そのほか関連道路に百億円以上を要します。これだけの支出をするにもかかわらず、新幹線工事や連続立体交差工事については、JR九州への委託となり、JRの関連業者しか請け負うことが出来ません。地元の業者は中小の5社程度しかありません。八代以南の新幹線建設工事では地元建設会社の請負額はわずか10数パーセントに過ぎないというのが実情です。多くの市民は自分たちの税金がつぎ込まれるのだから、当然地元業者に大半の仕事が発注されるものと考えています。負担割合から見てもこんなばかげたことはありません。直接レールを敷く工事などについては専門的な業者でなければならないと考えますが、安全配慮の指導がJRから適切になされれば、高架そのものの建設工事などについては、地元建設業者で十分出来る仕事です。県も市もJRと十分、納得のいく話し合いをして、地元経済への最大限の波及効果が上がるように努力すべきではないでしょうか。
                                                           以上




日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
〒862-8570  熊本県熊本市水前寺6-18-1議会棟内
TEL・FAX  096-385-8770 MAIL :matsujcp@khaki.plala.or.jp