政策や提案

2004年 11月2日

旧国営羊角湾干拓事業跡地利活用事業について
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熊本県知事潮谷義子様
熊本県公共事業再評価監視委員会委員長滝川清様
                

   旧国営羊角湾干拓事業跡地利活用事業について

1、羊角湾の埋め立て事業の経過と活かすべき教訓
事業廃止となった旧国営羊角湾干拓事業の跡地の利活用策としての「久留地区公有地造成護岸等整備事業」は、平成12年に事業採択され、さらに見直しがなされ、現在「熊本県公共事業再評価監視委員会」において審議されています。
羊角湾の事業をふりかえってみると教訓とすべき共通点があります。

@天草下島の羊角湾周辺(牛深市・河浦町・天草町)の山林原野を開墾しての農地開発事業と羊角湾干潟の干拓、湾の一部を締め切っての淡水化等をめざした国営羊角湾干拓事業は、着工後の干拓としては全国ではじめて事業廃止になりました。
  国営羊角湾干拓事業の廃止の後、平成12年、公有地の土地利用計画(約23億円)、護岸整備(約24億円)の計画がたてられ、その後計画の見直しがなされ、新たな公有地土地利用計画(約3億5千万円)、護岸整備計画(約14億円)がつくられています。
  これら全体の流れを通じて問われるのは、国民(県民・住民)の税金を使って、公共のためになされるべき事業において、その計画段階から国民(県民・住民)の要望、同意、参加が真に保障されてきたかということです。その不十分さ、欠如ゆえの、多大な国民の税金投入のうえでの廃止、さらなる見直しということになっているのではないかということです。

A現在問題となっている久留地区公有地造成護岸等整備事業については、当初計画では約7haを埋め立て、地ビール製造・販売、乗馬交流公園、動植物ふれあい施設、マリーンスポーツ基地などをつくろうとするものでした(総事業費47億円)が、環境問題、社会経済情勢の変化により再検討がなされ、5haに縮小、総事業費17億7千万円で、ふれあい農水運動公園(多目的芝生広場、花の広場、多目的スポーツ広場など)をつくるとなっています。
  羊角湾事業の経緯からして、県公共事業再評価監視委員会の審議が、公平・公正・正確になされることが求められているところです。ところが羊角湾干拓事業跡地の利活用事業に反対する住民団体の意見書が、再評価監視委員会の公式文書になっていなかった事態が明らかになりました。このことは言語道断というべきものです。委員会事務局(県土木技術管理室)の責任はもとより問われます。同時に事業に反対ないしは異論を持つ意見が、同委員会の審議の際の正式な議論の対象にならないとすれば、「公共事業再評価監視委員会」そのものの存在意味が疑問視されるものであり、委員会としても、経過と責任、今後のあり方等が、当事者および県民に、あらためて明らかにされなければなりません。

2、旧国営羊角湾事業跡地利活用事業の問題点ついて
@「地元住民からの要望による事業」とは判断しがたい
 同事業にかかわり、「地元からの要望」として、グランドゴルフやサッカー場としての利用があげられています。サッカーに関する町内学校へのアンケート調査においては、「グラウンドがあればサッカーをやりたいか」との項目が設定されていますが、この項目に対して、小学校では67%、中学校では54%、高校では63%が「やりたい」とこたえています。また、町内各老人クラブからもグランドゴルフ場整備に関する要望書があげられているところです。
 しかし、いずれも施設建設場所として羊角湾の埋め立て用地をあてることについては一切ふれられておらず、住民の施設確保の要望イコール羊角湾埋め立て事業というものではありません。

A住民の要望と適切な土地利用計画
 住民のこうした施設設置への要望にこたえるうえでは、町の旧施設跡(役場、旧河浦中、旧富津中、旧宮野河内中など)や町民総合グラウンドの利活用が優先、前提とされなければなりません。
 県としては、こうした代替案について、町に対して、遊休公有地の有効利用、財政などの角度から、助言・援助を行うべきであり、そのことを通じての十分な検証を経ずして、住民の要望を羊角湾埋め立て事業に結びつけることは拙速のそしりを免れません。
 遊休公有地の発生は、後で生じたものということであれば、「再評価監視委」の審議のなかで、そのことが改めて審議されるべきであり、県・町は、「代替案」の検討を行うべきです。

B防災について
 防災については、当然のことながら怠りなく整備をすすめなければなりません。どう整備するかについては、護岸整備についても、亀裂などはごく一部個所であり補修上げで十分対処可能であるとの声も上がっており、住民との協議を十分すすめ計画を具体化していくべきです。

C県及び河浦町の財政面から
 熊本県の財政状況は、多額の県債残高に加えて、「三位一体改革」の名のもとでの国による財政圧縮により、再建団体への転落が危惧される状況です。そのためさらなる「行財政改革」により、福祉や教育、県民サービスが危機に瀕しています。河浦町の財政にしても基本的に同じです。
 こうしたなか、総額17億7千万円の羊角湾埋め立て事業の必要性については、行財政のあり方としても、あらためて真剣な検証がなされなければなりません。

D環境保全上の問題点
 埋め立て事業が計画されている羊角湾の干潟や藻場には底生生物・アマモ・コアマモなどの絶滅危惧種が多数存在しており、50種類もの希少生物が存在しているといわれています。
 このような豊かな自然環境を破壊することになりかねない同事業をこのまま継続することは、「環境立県」を基本すえ「環境の汚染・破壊を未然に防止することを基本として、快適な環境の保全・創造に努めることは県の大きな責務」としている県の方針とも相反するものです。
 また、締め切り堤防と埋め立て用の捨石についても、魚礁となるので撤去しないでほしいとの声があがっている一方で、湾内の潮流に影響を与え環境悪化につながる恐れがあるとの理由で撤去を求める声もあがっています。地元漁協や住民の意見をきくとともに、しっかりとした環境調査を行い、その情報を住民に提供し、検証していくことが求められています。

3、旧国営羊角湾干拓事業跡地利活用事業は中止を
@住民の意見・要望にそった事業のあり方を検討すること
 羊角湾干拓事業に反対する住民団体による県公共事業再評価監視委員会あてに提出された文書が公式文書となっていなかったことについて、「なぜそうなったのか。『再評価監視委』のどの規定によるものか。あるいは規定上の根拠なくなされたのか。それならばなぜそうなったのか」「責任の所在はどこにあるのか」「今後どうするのか」「再発防止のためにどうするのか」明らかにすることを求めます。

A公共事業再評価監視委員会は羊角湾埋め立て事業中止の英断を
 県においては、「公共事業の効率化、重点化を図るとともに、その実施過程の透明性の向上を図るため、すでに実施されている事業の再評価」を目的として公共事業再評価監視委員会が設置されています。
 日本共産党として同委員会の役割を評価しつつ、公共事業審査の対象・角度を、環境、景観、財政、採算、代替案などの視点で、さらに充実していくことを、県議会の一般質問等で提案してきました。
 羊角湾埋め立て事業については、財政面、環境面、代替案、住民との意見の相違など、様々な問題が露呈しており、県公共事業再評価監視委員会においては、事業中止の決断を下されることを求めるものです。

B計画を白紙に戻し、住民参加型の新たな計画づくりを
 同事業については白紙に戻し、計画段階から住民参加、住民提案を重視し、住民と行政の「参加と共同」による計画づくりをすすめることが求められています。

 平成11年、海岸法が改正されました。「治水」「利水」に加えて「環境」「地元の意向」を加えた「河川法」改正の主旨と重なるもので(「海岸法は、農林省・運輸省・建設省の3省の共管法ですが、改正作業は建設省が中心となりおこなったため、かなり河川法を意識した改正となりました」海岸法の改正について―建設省河川局防災・海岸課海洋開発官・青山俊行)、「環境」、「地方分権」、「事業の透明性」の面からの改正がなされています。
 こうした法改正の意味を十分考慮し、自然と人を生かした地域振興、環境、財政などにわたる総合的な検討を県および公共事業再評価監視委員会に求めるものです。





日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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