仁比聡平参議院議員の質問 議事録


 2004年11月25日
参議院国土交通委員会

この速記録は未定稿であり、正式の会議録ではありませんので、ご注意ください。


仁比聡平議員
 日本共産党の仁比聡平でございます。
 私は、八月三十日の台風十六号による熊本県球磨川流域の災害について質問をいたします。
 私は、九月十六日と十一月十二日、十三日の二回にわたって熊本県球磨川流域の被害状況を現地調査をしてまいりました。この十六号台風によって、五木村の国道四百五十五号線や宮崎への幹線である二百十九号線が土砂さいがいで崩落を、寸断をしたり、あるいは球磨川中流域の浸水が発生をして大きな被害が出ています。
 そこでまず、芦北町の漆口という地区の対策についてお伺いをしたいと思うんですけれども、お手元に資料としてその被災時の写真を配らせていただきました。この一枚目の写真がその漆口という地域ですが、写真の中央に橋が写っていますけれども、ここが球磨川本川とここに合流する支川との間に架かっている橋です。正面に完全に床上浸水をした家屋が見えますが、このうち、お酒屋さん、真ん中にあるお酒屋さんの建物があるかと思います。このお酒屋さんの建物は、つかっているのは一階部分ではなくて二階部分までつかっている。水面の上に上がっているのは三階部分だということなんですね。
 このお宅の被害者の方から直接お話を伺いましたけれども、今回も二メートルを超える水が出て、水圧で畳が跳ね上がって、冷蔵庫を始めとして家財道具が次々と流されていった。二階の窓は閉め切りにしてしまうと家が水圧で壊れてしまうから開け放しにするというような知恵をもう働かせておられるそうですけれども、こういった被害が昭和三十年代から昭和四十年、昭和四十六年、昭和五十七年、平成五年、平成七年、平成十六年、今年という形で繰り返されてきでいるわけです。
 これだけ被害が繰り返されながら、それも三大急流だと言われるこの直轄河川のすぐわきにあるこういう被害に対して、これまで対策が打たれてきていません。国土交通省の方からは、たとえダムができたとしても、この地区の、震災は繰り返されるんだという説明を住民は聞いているというわけです。こういう地域に必要な対策が打たれてこなかったということは極めて重大だと思いますので、ですから大臣の御見解をここでお伺いをしたいと思うんですが。
 河川の管理者である国土交通省の責任で、直ちに対策を取るべきではないでしょうか。

国務大臣
 この芦北町の漆口地区ですか、ここは数年に一回の割で浸水被害を受けているというお話でございます。本年も、今御指摘ございましたように、十六号でこのように大変な被災を被ったわけでございますから、ここの、床上浸水の被害を受けたのが六戸というふうにお聞きをしております。この地区は非常に狭あいなところで、一つはJR線が、一方で鉄道が通っている、更に県道があるというところで、治水対策をするにしても、その辺のJR線また県道との関係がございます。そういう状況を踏まえて、今委員の方から御指摘があったように、国土交通省といたしましては、熊本県、また芦北町との間で今後の対応について協議を行った結果、先ほど申し上げましたこのJR線や県道の取扱いなども含めて三者が連携して取り組んでいくということとなった次第でございます。
 まず今年度は現地調査をしっかり行いまして、来年度から具体的な治水対策について調査検討を実施することといたしまして、宅地のかさ上げ等の整備方法について、地域住民の御意見をちょうだいしながら早期に対策を実施をしてまいりたいと思っております。

仁比
 これまで対策が打たれてこずに、住民の皆さんは一刻も猶予がない思いでいらっしゃいます。今の決意を現地でしっかり進めていただきたいと思います。あわせて、球磨川流域には四十二か所の河川改修計画がありますけれども、この漆口も含めてまだ八か所しか終了していないという状況にありますので、是非とも強い取組をお願いをしておきたいと思います。
 球磨川流城の河川改修は、上流域、中流域、下流域についてそれぞれの対策が必要です。中流域の典型地区を今お尋ねをしたわけですけれども、あとの時間で人吉地区の問題に限って質問をさせていただきたいと思っています。
 さきの十六号台風では、まず人吉地区では毎秒何トンの水が流れたのか、また観測地点での水位はどれぐらい上昇したのかと、この事実をお尋ねしたいと思います。

政府参考人
 球磨川本川の出水の状況でございますが、台風十六号のときの流量でございますが、これは速報値での推定の流量でございますが、約四千三百トンでございます。毎秒四千三百トンでございます。これは計画の流量の四千トンというのを上回っておりまして、人吉の観測所におきまして観測したピークの水位が、八月三十日の十六時四十分に三メーター九十六、三・九六メーターという水位を観測しております。

仁比
 今の水位三・九六メートルというのは、国土交通省の計画でいいますと危険水位が三・四〇メートルだということで、危険水位を五十六センチ超えているという数字だと思うんですね。そういう計画に照らして危険だという水位を五十六センチ超えているんですから、急いで流量を確保するための対策が私必要だと思います。
 私、現地を見てまいりまして、資料の写真の三枚目と四枚目をごらんいただければと思うんですが、三枚目の写真は、これちょっと分かりにくくて申し訳ありませんけれども、私が背中を向けて立っていますが、この立っている地点が川と土手の境のところです。ですから、これ奥側が上流で私どもが左岸に立っているところに写っているわけですけれども、この左岸の岸から左手に向かって、つまり対岸に向かって土砂がたくさん堆積しているのがお分かりだと思います。ここには川の真ん中に中川原公園という州があるわけですけれども、この中川原公園から左岸側がほとんどこういう上砂で埋まってしまっていると。ですけれども、かつてはここはもちろん川で、中川原公園を挟んで両方に水が流下をしていた地城なんですね。
 四枚目の資料四の写真ですが、これは繊月大橋といわれる橋がこれ架かっていますけれども、これのすぐ下流の部分の右岸から写したものです。
 この右岸側にたくさんの雑草が生えた土地があると思いますが、ここもかつてはすべてこれ水が流れていたところなわけですね。こういった土砂、堆積物、これを川の水量を確保するために直ちにしゅんせつするべきではないかと思いますけれども、いかがですか。

政府参考人
 委員に現地を見ていただいたようでございますが、この地域につきまして過去の河道の変動状況を把握してございますが、過去十年ぐらいの間ではそう大きく河道の状況が変わっていないということでございますが、なお今回の出水状況、先ほどのその危険水位を上回っていたというようなこともありますので、こういうものを詳細に調査をいたしまして、今後の対応について検討してまいりたいと思います。

仁比
 対応を検討されるということは、かねてから繰り返して住民の方々に言われてきたことじゃないかと思うんです。再三再四、この堆積物をしゅんせつをしてくれ、計画河道まで掘削することなしにも、この堆積物をしゅんせつするだけで流量が確保されて、危険だと言われる水位が流れたときにも安心できるじゃないかというのが住民の皆さんの要望だと思うんですね。
 ですから、どこをどれだけ取るのか、あるいはそのためにどんな関係者と調整に入らなきゃいけないのか、具体的な話を進めなきゃいけないんだと思うんです。
 そこで、大臣にお尋ねをしたいんですけれども、このしゅんせつについて。危険だというふうに認識をしておられるのであれば、この住民の皆さんの思いにこたえて、直ちにしゅんせつの具体化に入るということが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

国務大臣
 いずれにしましても、今河川局長が答弁いたしましたように、詳細な調査をしっかりさせていただきたい、その上で検討、今後どうするか検討したいというふうに思います。

仁比
 是非、速やかな実施を改めて求めておきたいと思います。
 もう一つ、事実の確認をしたいと思います。この人吉地区の計画高水水量と、それに対する現在の整備状況がどうなっているか、お答えください。

政府参考人(
 球磨川につきましては、計画の流量が、基本高水流量というのが七千トンでございますが、このうちの三千トンをダムにより調節しまして、これは市房ダムという既設のダムがございますが、それと川辺川ダムという直轄のダムが現在進行してございますが、これらによりまして三千トン調節して四千トンの河道を確保しようという計画になっておりますが、現状の流下能力でございますが、これは昭和四十年の災害を契機としまして、掘削、築堤等を進めました結果、現在おおむね三千九百トンぐらいの流下能力を確保している現状でございます。
 なお、今回台風十六号による出水は四千三百トンということでございますが、上流の市房ダムで調節した結果でございますが、これらにつきましては、過去の出水状況を見ますと、大体十年に一遍ぐらいの間隔で発生しているような洪水規模でございまして、今後のダム事業によりまして安全を確保していくということが非常に重要な課題であるというふうに考えております。

仁比
 川辺川ダムをめぐっていろんな状況があるのはもう皆さん御承知のとおりのことで、そのことを私伺っているんじゃないんですよ。
 その写真をもう一枚見ていただきたいんですが、写真の二枚目、資料の二です。これも人吉市内の薩摩瀬というところの写真です。これごらんいただいたように、ごらんいただけるように、これだけの洪水量があっても堤防の上からその記してあるところまで一・五メートルの余裕があるんですね。その後も、その下ももう少し余裕がある状況です。
 先ほど御答弁をいただいたように、この八月三十日には人吉地区での水量というのは四千トンを超えて、計画降水量の四千トンを超えて、実際には四千三百トンが流れているわけです、言わば、実態と計画の間に乖離があるということが実証されたということだと思うんですね。
 なぜこんなことになるのかということを調べてみて驚きますが、今のこの河川の計画が一九六六年、昭和四十年に作られて、以来三十八年、基本的な部分が変更されてない。その間に人吉地区の河川改修ももちろん進んでいるし、さらに上流城の森林も成長をして森林の保水力も向上しています。四十年近くの間に様々な流域の条件が変わっているわけですから、実態にかみ合わないというのは私当然だと思うんですね。これを見直すべきではないでしようか。改正河川法も計画の見直しを言っているように、実態に従ってしっかり計画を見直すべきではないか、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣
 今お話ございました平成九年の河川法改正がございました。この河川法改正を受けた新しい治水計画として、球磨川水系の河川整備基本方針、そして河川整備計画を策定することとなっておるところでございまして、その際には今年のこうした洪水も含めて調査検討を進めてまいりたいと思っております。

仁比
 今、先ほど答弁があったような今整備をしてきての現在の流れる流量が三千九百トン、毎秒ということです。今度、実際に流れた四千三百トンとの差は毎秒四百トンあるんですね。
 この毎秒四百トンという数字は、実は先ほど局長が市房ダムでカットができたというその今回の流量と匹敵するわけですよ。国土交通省は市房ダムによる洪水のカットが四百三トンだったというふうに言っていますが、つまりダム一個分の洪水調整機能だけの違いがある、実態と計画の間に。
 だからこそ、命や財産にかかわる問題なんですから、この計画をしっかり見直して実態に見合った対策をする、そして優先順位をしっかり付けていくということをしなければ、ダムの、申し訳ありません、中流域の河川の改修だとかあるいは人吉のしゅんせつというような住民の本当に要望も進まないということを指摘をしておきたいと思います。
 あわせて、そうした責任をしっかり果たして河川改修をやっていただくなら、ダムによらない治水対策はこの球磨川流域において可能なんだということを申し上げて、質問を終わります。




日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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