球磨川・川辺川の治水対策について調査
 
 3月2日、球磨川中流域や川辺川流域の治水対策について、昨年の台風16号の際、川辺川・球磨川流域で、冠水、溢水、浸水、避難勧告等のあった全地点を、県河川課、振興局、市民団体のメンバーに案内、説明をしてもらい視察を行いました。浸水家屋17ヶ所、交通止めが13ヶ所ありますが、パターンがほぼ同じの2ヶ所を除き全地点を視察しました。その結果確認できたのは、こうしたところの被害は、堤防のかさ上げ、道路のかさ上げ、河川の浚渫、排水設備の整備などによって防ぐことができるということでした。 

 
 
 【05.3.2】



視察をもとに球磨川・川辺川の治水対策について一般質問で取り上げました


 
視察を通じて明らかになったことを元に3月14日、球磨川中流域、川辺川の治水対策について一般質問を行いました。以下が質問の大要です。

台風16号の教訓
 
球磨川・川辺川の治水対策を考えるうえで、昨年の台風16号は、治水対策として何が必要であるかを検証する機会となりました。県からいただいた資料によりますと、浸水家屋ヶ所が17ヶ所、交通止めヶ所が13ヶ所です。先日私は現地視察を行いまして、同じパターンの2ヵ所を除いて、全地点をみました。場所によっては16号台風後、2回3回4回行った地点もございますけれども、その結果確認できたのは、こうしたところの被害は、堤防のかさ上げ、道路のかさ上げ、河川の浚渫、排水設備の整備などによって防ぐことができるということでした。
 流域住民の生命財産を守るうえでは、川辺川ダム建設ではなく、こうした対策が急ぎ求められてることが明らかになりました。このパネルを示してご説明いたします。左がが改修がすんでいる球磨村一勝地、右がなされていない芦北町漆口です。国土交通省が中流域の42箇所の計画を立てていますが、改修が終わっているところは左のような状態、右の漆口の3軒目の家は2階まで浸かっているというのが今度の16号台風でした。


球磨村一勝地
 
芦北町漆口 

これは球磨村渡の浸水地域です。
ここは内水排水設備の整備によって解決することができます。


進んだ河川改修
 
市房ダムによる水位低下効果は20cmということです。昨年の16号台風当時堤防の上端までは約1.5mの余裕があったことが確認されております。つまりダムの効果を過大に喧伝するのは根拠がないということ。人吉地区では、ある程度の余裕を持って16号台風当時は流れたということです。
 16号台風の時の人吉の流量は4300トンと国交省は答えています。過去においては、1982年・昭和57年には、5400トンが流れたことが明らかになっています。国交省は住民討論集会などで人吉の洪水流下能力は3900トンとしていますが、いかに根拠がないかは明らかです。これは、人吉の河道断面図ですが、

  

 左が昭和42年、右が平成6年です。大きく河川改修がすすみ、昭和40年時の洪水でも堤防から溢れることはない状況になっています。ダムではなく、河川改修をきちんとすることが水害を防ぐうえで大事だということをはっきり示しているのではないかと思います。
 
 
遊水地などの利活用
 
また、2000年の河川審議会答申は、「流域での対応を含む効果的な治水のあり方」についてでは、「連続堤方式等の河川整備を行うことが基本である」としながらも、「霞提や2線堤等についても、治水上の効果を適切に評価し、積極的に活用すべきである」としています。これは錦町西地区、球磨川とこさで川合流点のうえです。この場所は住民討論集会の際の現地調査でも訪れたところです。

次の日

 
左が台風16号当日の写真です。水があふれております。右の写真がその翌日です。翌日はきれいに水が引いて、稲も立っています。ですから実際上、霞提のような役割を果たしています。こういうところをきちんと遊水地にしておれば保障もでるわけです。ですからなにがなんでもダムだダムだといわないで先人の知恵も生かした、いわば水害対策、洪水対策をとっていくことが必要になっていくことを、今度の16号台風での現地の結果が示しているのではないかと思います。

霞提とは・・・
霞堤は、堤防の一部に、流路方向と逆向きの出口をあらかじめ作っておき、洪水時には洪水流の一部をここから逃がし、洪水の勢いを弱め,下流側で再び流路に取り込むといった治水技術です。現在のような強固な堤防を建設する技術がなかった時代に編み出されたものです。それほど大きな連続堤を作らずに、洪水を軽減できる利点があります。


人吉地域の土砂の浚渫(しゅんせつ)について
  
浚渫とは…土砂をすくい取ること

これは人吉市中河原地点の概要を示した断面図と写真です。

   中川原地点の写真
 

 この黄色の部分が土砂の堆積です。掘削とかいうレベルでなく、平水面以上に堆積している土砂がこういうふうになっている。中川原地点の場合は球磨川の左岸の方は、もう水が全然流れないというぐらいに堆積しています。人吉地点ではせんげつ橋の下など何箇所かで土砂が堆積しております。ですから16号台風の際、避難勧告が出された人吉西瀬地区の町内から、「河川敷に堆積した土砂を定期的に取り除いて、流域住民の安全が確保できる河川行政」をとの要請が人吉市に出されています。お聞きしますと、もう7年まえから要請し続けているということです。
 そこで、人吉の堆積土砂の問題について、この土砂の浚渫・除去について、県としても国交省に強く働きかけていただく必要があるのではないか、強く求めまして、この点について土木部長におうかがいいたします。

土木部長
 県管理区間におきましても局所的に堆積いたしました土砂につきましては、治水上の効果もありますことから採取を許可しているケースもございます。また、国におきましても河川管理上問題がある個所につきましては土砂の撤去を実施されていると聞いております。人吉市中川原地区の掘削につきましては管理者であります国において判断されるものと考えております。なお県では国の施策等に関する提案におきまして、災害に強い安全な県土づくりの推進を強く国に要望しているところでございます。

  
 先日、相良村上川辺地区の川辺川の土砂の採取現場に行きました。味岡建設が約1万トンの砂利を採取したところです。川辺川においては、この3年で、9ヶ所で2万5千トンを超える砂利が採取されています。この砂利の採取によって河川環境が著しく壊されたというような話は聞いておりません。これが上川辺地区の姿です。まさに清流川辺川が生き生きと流れている現場であります。

     
 ですから、私は人吉地区におきましても、この堆積物のしゅんせつをする際はちゃんと環境に影響がでないように工夫をして、行うということをやれば問題ないと思います。この点でなぜきちんと、国交省に強くはたらきかけができないのかと思うんです。
 河川砂利は土木材料として貴重です。また県政の重要課題のひとつである有明海・八代海再生のなかで、アサリの生産をはかるためには覆砂をすれば確実に生産が飛躍するということも明らかになっているわけです。しかし、この砂をどこから持ってくるかという問題があります。こうした面の活用も可能です。
 昨年の熊本県の「国の施策等に関する提案」では、「災害に強い安全な県土づくり」として、「環境保全を図りつつ河川整備」の推進を国に求めています。このなかに人吉地区も位置付けて、もっと強い姿勢で臨むよう求めたい思います。
 参考のために昨年の参議院国土交通委員会で、国土交通大臣は今年の洪水も含めた調査検討をするとこたえておりますので、ぜひ強く国に求めていただきたいと思います。
 
 今回は、球磨川・川辺川の治水対策について、ダム建設ではない、総合的治水対策について、台風16号の検証を通じて明らかにいたしました。河川改修、排水、遊水地、森林保水力等を組み合わせた総合的治水対策は、ダム建設より安上がりだし、早くできるし、ゼネコンが儲けの大半を占めるダムと違って、仕事は地元、県内企業でできるし、お金も県内におちるし環境も守れる、まさに一石何鳥もの効果を発揮するわけです。県においても、こうした点からの球磨川・川辺川の治水対策について、国に対して決意をもって、臨んで頂き、ダムに頼らない総合的治水の道を切り開いていくことを求めたいと思います。
 新利水計画の確定、収用委員会の裁定など、川辺川ダム問題は、次の段階に移っていくことになるでしょう。こうしたなかで治水問題での住民討論集会の再開を、国に働きかけていただくことを、知事、鎌倉地域振興部長に要請しておきたいと思います。

 【05.3.14】



日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
〒862-8570  熊本県熊本市水前寺6-18-1議会棟内
TEL FAX  096-385-8770 MAIL :matsujcp@khaki.plala.or.jp