政策や提案

2005年 1月17日

諫早湾干拓事業工事差し止め仮処分についての異議申し立て却下を受けて

熊本県知事潮谷義子様


 
諫早湾干拓事業工事差し止め仮処分についての異議申し立て却下を受けて、熊本県として、国に対して、諫早湾干拓事業中止を求めていただきたい


 佐賀地方裁判所は、有明海漁民106人の申請による国営諫早湾干拓事業の工事差し止め仮処分について、昨年8月26日の決定に対する国の異議申し立てを却下し、工事続行禁止の決定を改めて下しました。
 1月12日の佐賀地裁決定は、諫早湾干拓と有明海の環境悪化の因果関係を改めて認め、「潮受け堤防の存在する限り、漁業者に将来的にも漁業被害が継続する可能性を否定できず、その生計に重大な影響が及ぶことが懸念されると認めざるを得ない」と指摘し、「漁業被害を将来的に防ぐための第1歩としては、工事の差し止め以外に他の有効な代替手段も見当たらず、その意味で差し止めが被申立人(債権者)らが取りうる現時点で唯一の最終的な手段と思料される」と決定理由を明らかにしています。
 昨年8月の佐賀地裁決定を受けて、国は、直ちに干拓事業を中止し、排水門を開放し、有明海の再生に取り組むことが求められていたにもかかわらず、決定に対する異議を申し出るという行為をとりました。今回の佐賀地裁決定は、こうした国の姿勢を再度断罪したものでもあります。
  農水省は、「農林水産行政に係わる政策評価の実施について」と題する自らの文書(方針)のなかで、「基本的考え方」として、「我が国の行政においては、従来、政策の企画立案段階の検討に重点がおかれ、政策の効果やその後の社会経済情勢の変化に基づき政策を積極的に見直すための評価機能は軽視されがちであった」「今後、国民合意の下、情勢の変化に対応した透明性の高い効率的な政策を実施していくためには、客観的な基準の下に政策を評価し、その結果を政策の企画立案に反映させることが重要である。また国民に対して、政策の目的や効果を定量的・客観的に明らかにすることにより、行政の説明責任を徹底し、行政に対する国民の信頼性を向上していく必要がある」としています。
 にも拘らず農水省は、昨年8月、佐賀地裁の決定を不服として異議申し立てを行いながら、その審理のなかでは新たな証拠も提出しないという態度をとりました。今回も、決定のまともな、客観的な検討もせず、「諫早干拓推進」、福岡高裁への抗告を強行しようとしています。農水省のこうした諫早干拓に関す態度、行為は、自ら定める基準(方針)にも著しく背くもので、厳しく正されなければなりません。
 国・農水省は、今度こそ、司法の判断、その背景にある国民の声を重く受け止め、諫早湾干拓事業の中止と排水門開放、有明海再生への取り組みを開始すべきであり、福岡高裁への抗告は断じて行うべきではありません。
 
 「宝の海・有明海」の再生は、県民と県産業の元気づくりにおいて不可欠の重要課題であり、熊本県としても、積極的主体的対応が求められています。
@ 国・農水省が、福岡高裁への抗告を行わないようはたらきかけること。
A 国・農水省が、諫早干拓事業を中止し、潮受け堤防排水門を開放し、有明海再生への施策を進めるよう求めること。
以上要望いたします。





日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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