政策や提案

2004年10月13日

川辺川ダム総事業費等についての住民討論集会開催へ、総合調整役として尽力を
熊本県知事潮谷義子様
                   

川辺川ダム総事業費等についての住民討論集会開催へ、総合調整役として尽力を


1、国土交通省は、みずからの方針(「公共事業の説明責任(アカウンタビリティ)向上行動指針」)にもとづいて、川辺川ダム事業費増額について、説明責任をはたすべきである。
  国土交通省(旧建設省)は、1999年2月5日「公共事業の説明責任(アカウンタビリティ)向上行動指針」を公表しました(この指針は国土交通省のホームページに掲載されており、「公共事業の説明責任」についての国交省としての公式の文書はこれのみ)。   
 「公共事業の説明責任行動指針」(以後「指針」)は、公共事業に関して、国民のあいだにいまだ深刻な不信感が醸成されている要因として「公共事業の実施方法等が国民から見て十分納得のいくものとなっていないこと」「なにをしているかについて、国民に説明する努力が足りなかったこと」をあげ、「公共事業の各実施段階を、国民に対してさらに説明性の高いものへと改善を図ること、同時に幅広い情報を積極的に国民に提供し共有していくことが必要であり」、これが「課せられた説明責任(アカウンタビリティ)であると述べています。
 さらに具体的措置として、「国民から見て、『知りたい情報が提供されていない』という印象が、公共事業への不信感につながっている。『行政は国民に対するサービスの提供である』ことを踏まえ、公共事業に関する情報についても、量と質を向上させ、積極的にオープンにし、国民と共有していく姿勢へ改革を図る。さらに「情報を一方的に提供するのではなく、双方向のやりとりの中でなかで国民の意見を反映し、コミュニケーションを推進することによって、信頼関係が構築されるという意識を徹底していく」「公共事業は、国民の安全、便益・福祉等の向上を目的として、国民のお金(税金等」で社会資本を整備・維持していくものであり、……社会資本について、今後の整備の基本的考え方、実施上の課題、隘路の打開策等を明確に示し、意見交換を行いながら、ともに考え、創り、育てていく姿勢で取り組む必要がある」としています。
またすべてのプロセスにおける評価の明確化として、「政策企画時、事業採択時、事業実施中、事業完成後等各段階における評価を充実させ、広く情報提供していくことが必要」としています。
 以上のような国交省自身の「公共事業の説明責任」にかかわる方針(指針)にてらして―

@「説明責任」の場である住民討論集会を開き、住民代表などとの議論をしながら、一 方では、2650億円から3300億円への事業費のとりまとめをやるといったあり  方は、情報を「積極的にオープンにし、国民と共有していく姿勢」(「指針」)にかけるものであること。さらに熊本県や県民に対する説明のなかで、国家公務員としての業務のなかでの作業・積算でありながら「個人メモ」「内部資料」と強弁したこと。  
さらに加えて、「個人メモ」と同額の3300億円を、日時もたたない新利水計画づくりの事前協議において、公式資料として示したこと。
こうした一連の経過と事実に見られる国交省の態度・対応は、「指針」にてらして、著しく逸脱しておりが、国の公共事業である川辺川ダムとその事業主体である国土交通省、同九州地方整備局への不信をいっそう強めたことは明らかです。
総合調整役・熊本県として、国交省としての総括と厳しい反省を求めるべきものです。

Aダム事業費が、現計画の650億円増の3300億円となることを、「個人メモ」ではなく国交省としての公式資料として示した際、同額の3300億円になったことについて、試算のプロセスの違いとの説明をしていることは、不可解きわまるものであり、到底納得できないものです。
国交省は、3300億円の根拠と「個人メモ」と公式資料の試算プロセスの違いについて、責任ある説明(説明責任を果たす)をすることが当然求められており、県として、県および県民への説明を求めるべきです。

B新利水事業においてダムを水源とする場合、ダムの総事業費との関連は不可分であり、この面でも、国交省が説明責任を果たさないままに3300億円億円を公式の額として示すことはきわめて無責任といわなければなりません。
 また国交省は、1年ぐらい調査し、詳細な設計をし、そのうえで増額したダム事業 費について、県に説明し、そののちに住民討論集会か説明会で、県民に説明するーと述べていますが、これは「すべて、まず自分たち(国交省)で」、県はその後、県民には、更にその後に結論だけを説明する(押し付ける)ーという態度そのものであり、「指針」の「基本的考え方」「説明責任向上のための具体的措置」の主旨、諸規定に微塵にも沿わないものであり、厳しく指弾すべきです。

C国交省は、扇大臣(当時)、青山事務次官(当時)、九地整川崎河川部長らが、これまで住民討論集会の積極的意義についてたびたび言及しており、こうした国交省の幹部、当事者らの発言からして、国交省が、現局面において住民討論集会を開催し、責任を持って臨むよう、強く求めるべきです。


2、熊本県は、総合調整役として、また県民に代わって、住民討論集会の開催を、国交省に
求めるべき。

@現時点で、「住民討論集会はやらない」との国交省の態度について、県民としても、熊本県としても、納得できるものではないと考えます。
 9月9日の県民への説明会の最後に、国交省九地整幹部は、(住民討論集会について)「熊本県から要請があれば開催する」意思を明言しています。本来国交省が、「説明責任」の自覚のもとに主体的に、積極的に対応すべきものであることはいうまでもありません。同時にこうした経緯もふまえて、総合調整役・熊本県として、国交省に対して、住民討論集会の開催を強く求めていただくよう要請します。

A今回の事業費増額問題は、先述したように、「指針」に照らして、国交省が説明責任を果たすべきものであり、県民、川辺川ダム反対・推進住民・団体が、十分な説明と討論の場を求めるのは当然であり、県として、いまここで役割を果たすことが緊要です。
 平成10年3月3日提出の「川辺川ダムの建設に関する基本計画(変更案)」に関する福島譲二県知事(当時)の意見」(平成10年2月県議会で議決)は、「重大事項の事前協議」「事業費の縮減」などを求めています。事業費の大幅増額が、「個人メモ」ではなく、公式資料として示されたもとで、県は、平成10年の知事意見、県議会決議にそって、詳しい説明を主体的に国交省に求めるべきです。
 熊本県においては、「財政健全化計画」(平成13年2月)のなかで、「構想段階の公共事業(事業規模が概ね10億円をこえるもの)及び残事業が概ね10億円を超える継続事業については、今後の事業推進のあり方等について総合的な検討をおこなうとともに、事業の優先度の峻別及び重点化を図る」としています(「三位一体改革」推進のもとで、行財政の更なる見直しが現在なされている)。また「県公共事業再評価制度」においては、「事業の進捗状況」「事業をめぐる社会経済情勢及びその変化の状況」「費用対効果分析の要因の変化」「コストの縮減や代替案などの可能性」を評価の視点として審議し対応方針を決定するようにしています。県財政危機のもとで、単県公共事業の大幅削減(平成10年比54%)、福祉や住民サービスの抑制などが強いられようとしています。こうした一方、元利合算すると170億円超にもなる県負担増を求めるのが今回の事業費増であり、そのプロセス、根拠の説明を現時点で求め、その内容が妥当であるか否かについて、県民とともに考え判断すべきです。

B住民討論集会の第1回は主催者として、2回から9回までは総合調整役として、熊本県がはたした役割は、公共事業の公正、公平、透明なあり方の追求という点で、川辺川ダム推進、反対を越えて、意義あるものであったし、広範な県民が評価しているものです。また新利水計画づくりにおいて、昨年6月16日の合意にもとづき総合調整役を果たしてこられたことは、農民が主役の計画づくりという点で、厳正中立、公平の立場にたってのものでした。またこの立場と行動は、昨年5月19日の亀井農水大臣(当時)の談話にも沿ったものでした。
  新利水計画の事前協議における総合調整役としての熊本県の対応や今回の事業費増額発覚後、県が国交省の説明を求めたことや県民、川辺川ダム推進・反対側に対する説明会の開催を国交省に求めたことに対して、1部から批判や論難がなされています。
  この問題についてあえて指摘すれば、総合調整役として中立、公正にことを進めるということは、一方において、説明責任におけるサポタージュや推進・反対側相互の
協議、共同を妨げる行為があった場合は、それを指摘し是正させることをも含むものであり、別の一方に偏るというものではありません。1部の批判、論難はあたっていない感をもつものです。
  川辺川ダム問題は、いよいよ大詰めに向かう重要段階といえるものです。さまざまな事情、要素が絡み合い、複雑、困難な場面が展開されていくことになります。熊本県がこの期間とってきた立場・対応が、現在こそ、さらにはこれからにおいてこそ求められています。
  熊本県として、県が総合調整役として、住民討論集会や新利水計画づくりに向けてとってきたことの正当性を、県民に広く明らかにし、訴え、理解を得ることが大事です。
  県民の理解と支持のもとに、事業費問題を中心とする住民討論集会の開催を、国交省に求め、県民参加、県民とともに考え、創っていく県政を推進されるよう要望するものです。




日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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