政策や提案

2004年 3月12日

「県民中心」の施策の充実・発展を求めた知事への提言


熊本県知事潮谷義子様
                     

 県民とともに、「県民中心」の施策のさらなる充実・発展を

 県知事就任以来、様々な困難、課題のなか、県民の目線、「県民中心」の姿勢で、県政運営に頑張ってこられたことに、敬意を表します。
 日本共産党熊本県委員会は、潮谷義子知事の4年間の川辺川ダム、荒瀬ダム、福祉、教育等への対応、実績を評価し、対立候補を擁立しないことにいたしました。同時に今後の県政運営においては、是々非々の立場で対応していきたいと考えています。医療・社会保障、庶民増税による国民負担増、「三位一体改革」の名のもとでの地方自治体財政の圧迫など、厳しい状況のなか、県政が「県民主役」「県民の利益優先」の方向で前進するよう、県・市町村政、各分野、職場、地域での「草の根」の運動など、さまざまなレベルでの取り組みを強めていく決意です。
 以上のような立場にたって、今後の県政運営にあたっての基本姿勢と県政の重点的課題について、提案を行う次第です。ご検討のほどよろしくお願いいたします。


T、基本姿勢、県政改革について

  知事は、「2期目に向けて」のなかで、「県民中心」「県政は県民からの預かりもの、未来社会からの預かりもの、そこに付加価値をつけていくこと」を「大事な使命・視点」として、これまでの県政運営に臨んでこられたこと、そして自らが目指してきた「熊本の将来像」として、「確かな産業のうえで、豊かな自然、おいしい水、食べ物、その安心・安全できる生涯、そして交通の利便性に富み、保健・福祉・医療、これが充実している」等の熊本県の姿を上げられ、「県民の幸せを求め続ける。これが私の使命です」と結んでおられます。こうした目標・課題を達成するうえでは、少なからぬ壁、困難、圧力等もあるでしょうが、知事の情熱と信念を貫かれるよう期待するものです。そのためにも、「現場主義」「県民との対話と交流」「不偏不党」を実践・堅持されるよう願うものです。
  さらに、情報公開、説明責任の徹底、口きき一掃のための文書化など、県政の透明性、公平性をたかめるための措置、システムづくりを具体的にすすめていくことを要望します。


U、重点的課題について

1、福祉・教育に、思い切ったとりくみを
  「福祉は金を食うだけ」「福祉ばかりで経済政策がない」などの批判がありますが、これは、福祉と経済を対立させ、福祉・医療分野の施策の雇用・経済波及効果をみない論であり、意図的になされている側面も持っています。県民が、潮谷知事に期待するのは、従来の中央官僚出身など県民の苦労と痛みがわからない自民党知事とは違う、「あたたかさ」「やさしさ」であり、その視点にたった、お年寄り、障害者、困難を抱える県民、未来を背負うこどもを応援する県政です。だからこそ知事の福祉対策、35人学級の導入などに、多くの県民が拍手喝采を贈りました。そしてこうした施策が、雇用をはじめさまざまな経済波及効果を持ち、経済政策という面からもきわめて有効であることは、実証済みのことであり、政府も認めておるところです。
 乳幼児医療補費の小学校入学前までの無料化、妊産婦・不妊治療助成、小児救急体制の整備、介護保険の低所得者減免、宅老所の増設、ホームヘルパーの増員、市町村国保への県費補助、無認可保育所助成の増額、少人数学級の拡充、私学・授業料助成の増額などを要望します。1期目の福祉施策において「熊本モデル」として全国から注目されました。2期目においては、「熊本モデル」を、福祉・教育の分野においてさらに充実させ、全国に希望を与える役割をはたしていかれるよう期待するものです。

2、川辺川ダムについて
  川辺川ダム問題は、国の大型公共事業に対する地方自治体の態度のあり方、熊本の主要産業である農・林・水産業にかかわる問題、世界最大の公害・水俣病を発生させた熊本県にとって、また21世紀の熊本の維持・発展にとって重要な環境問題、長期に続く景気低迷による税収減、景気対策という名のもとにすすめられた大型公共事業推進政策によってつくられた膨大な県債と再建団体一歩前の県財政への更なる負担増などにかかわる問題です。だからこそ県民から直接選ばれる、県政の責任者である知事の判断・選択が、問われています。この点で、潮谷知事がとられた対応(住民討論集会の提案、新利水計画づくりなど)は高く評価できるものです。2期目においては、深い思慮と勇気を持って、川辺川ダム中止の決断を示されることを強く望むものです。
  利水計画においては、「国営」、「ダム利水を前提にしない」という基本にたって、「農民が主役」のとりくみを引き続き進めていただくよう求めます。第3回意見交換会時に実施されたアンケート結果が、川辺川ダム利水23%、その面積は対象面積の4分の1を示したにも拘らず、あくまでダム利水の固執する農水省の態度は許しがたいものです。県が、「急いで水がほしい」という農民の要求、大きく変貌している農業・農村状況を直視し、中小河川などからの利水案を提示されたことを評価し支持します。
  治水・環境をめぐっては、知事の提案を受けて、9回の住民討論集会が開かれ、森林保水力の賛否双方による共同検証など、論点の整理、議論の深まりがすすんでいます。
 新利水計画の確定、住民討論集会の議論と検証をへて、川辺川ダムについての判断が、国とともに県にも求められる段階が遠くない時期に訪れます。国の責任とかかわりを前提に、「河床掘削、堤防かさあげ、調整池、森林保水などを組み合わせた総合的治水、環境、財政」を留意され、広く県民から支持され、後世に残る決断と選択を強く要望いたします。

3、農林水産業、中小企業の振興
  秋田県においては、「秋田の農林水産業と農山漁村を元気つける条例」がつくられています(2003年3月31日)。この条例は、「農業」「林業」「水産業」を1本のものとして連関させて位置付けていること、政府が進める農業の大規模化だけではなく、農林水産業を支える地域・集落を大事にする視点から、条例名に「農山漁村を元気づける」とうたっています。熊本県は、秋田県に勝るとも劣らない農林水産業県です。農林水産業振興を、21世紀の県政の戦略的課題と位置付けて、条例、施策の整備・充実をはかっていくよう要望します。
  地産地消のとりくみをさらに強めること。価格・所得保障を重視し、家族経営、多様な担い手育成に力を。食の安全のために消費者参加をはかり、チェック体制の強化を。WTO農業協定の改定、食糧自主権の確立、自給率の向上を政府に強く働きかけること。
 間伐支援の強化と間伐材の多様な活用、県産材の利用拡大のための加工工場等の育成、公共住宅、公共施設への利用拡大の一層の促進、合板、繊維版、木製ガードレールなど新製品開発の支援。治山治水、防災の立場から植林・林業政策の充実を。
  諫早干拓の中止、潮受け堤防水門の中・長期開門調査の実施を国に強く働きかけること。赤潮の多発、のり・アサリ・タイラギ被害など、有明海・八代海の異変が続いており、県としても調査研究のための予算と体制の充実強化をはかること。国にもさらに強く働きかけること。
  中小商工業振興のためには、生活・福祉密着型の公共事業への切り替え、小規模事業受託制度の確立、入札制度の改革、経営指導、公的融資の拡充につとめながら、大型店の過当・無秩序な展開の規制、金融機関の貸し渋り・貸しはがしへの規制と地域金融の活性化策に取り組むことが強く求められます。

4、財政健全化について
  今日の県財政危機の原因をつくった原因の究明と総括が不可欠です。熊本県の政策・計画においては、「製造業出荷額4兆円」など工業振興に重点を置き、県財政を投入するというやり方がとられてきました。結果は、工業面で思わしくなかったばかりか、県の基幹産業である農業を衰退させ、林業、水産業も停滞させるなど、熊本県の強み、本来の力を弱めてきました。さらに重視すべきことは、バブル崩壊後、景気対策と称して、政府主導で大型公共事業が洪水のように続けられたことです。この背景には。日米構造協議にもとづく630兆円の公共投資基本計画先にありきという、アメリカ、財界優先、国民・県民不在の無謀極まりない自民党政治があります。こうしたなか県財政は、1990年には、4592億円だった県債残高が、2000年には1兆1189億円に膨れあがってしまいました。こうした点をしっかり総括し、今後に生かすことが必要です。
  「財政危機打開」「財政健全化」となると決まって出されるメニューは、県職員の定員削減、人件費の抑制、福祉や住民サービスなどのカット、手数料・使用料の引き上げなどです。この典型例が、細川県政でした。県「行財政改革」ということで、県職員の定数削減7%、手数料・使用料の引き上げ、保健所支所・土木事務所出張所・婦人寮の廃止、水産試験研究機関の統廃合などがなされました。      
日本共産党は当時、こうした細川「行財政改革」に厳しく反対しました。プランクトンの異常発生、のり被害の頻発のもと「『のり研』があったら」という漁民の声が聞かれます。DV問題などが大きな課題になるなか、「婦人寮を廃止ではなく、存続・改革しておけば」という声も聞かれます。深刻、多大な犠牲を県民と県職員にかぶせた「失われた8年」でした。一転して、福島県政になると巨額の、「ハコモノ」を中心にした投資なされました。また川辺川ダムに約600億円、八代港に約700億円、熊本港に約1000億円(いずれも2002年までの県費支出)が費やされています。こうした経緯と経験から生かすべきことは、本気で財政健全化、建て直しをはかるためには、数10億円、数百億円にも及ぶ巨大公共事業について、事業の中止、見直しを断行しなけれならないということです。公共事業は、地場の雇用と地域経済への効果が高い生活・福祉密着型への重点化をはかる必要があります。
  財政健全化のために、以下の点を提案します。
@川辺川ダムの中止。地域経済への波及効果も高い総合的治水代替案を。八代港計画の大島北地区西地区は中止し、干潟を守り、水産業の振興を。熊本港については、歴史的に総括し、大胆に見直しに着手を。熊本駅前整備については、過大な投資を避け、緑と水をテーマにした熊本らしい駅前に。政策評価については、県民参加でより民主的科学的なものにし、巨大公共事業にも「聖域なく」メスを。
A法的根拠も実態のも合わない、むしろ「逆差別」として部落問題の完全解決に逆行する、部落解放同盟などに追従した、不公正な同和教育・行政関係の支出はなくすこと。
B住民自治、自主合併をゆがめる過大な市町村合併誘導的な支出は改善すること。
C雇用、農林水産業の振興、福祉・医療・教育の充実など、県民のふところを温め、将来不安
を軽減すする施策をすすめる。
D県財政についての県民への説明責任を果たしていくうえで、パブリックコメント、住民懇談会などを開き、充実させていくこと。このなかで巨大公共事業の実際や同和支出なども明らかにしていくことが求められます。



日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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