質疑・討論の主な内容
2007年 2月 定例会 一般質問 3月7日
一般質問

水俣病問題について
川辺川ダム問題について
貧困と格差の拡大と県政について
■松岡とおる
日本共産党の松岡徹です。一般質問を行います。予算全般については、討論で行う予定にしておりますので、早速、具体的な中身にはいります。

水俣病問題について
 最初に水俣病問題について、知事に伺います。
 1月27日、水俣で開かれた「未来への提言―創世記を迎えた水俣」のつどいにおける知事の挨拶を起こしたものを現地から取り寄せ読みました。率直に言って胸に迫るものがありました。主として、政府・環境省の頑なな態度により、困難で複雑な事態に陥っている水俣病問題に、熊本県知事として向き合っている知事の苦悩が読み取れたからであります。
 2月23日、九州弁護士会連合会は、国、県、チッソ、鹿児島県に対して、警告を発し、全住民を対象にした健康調査の実施、症状に応じた補償などを求める文書を明らかにしました。さまざまな要素が交じり合い、経過があり、力関係があり、ことが淡々とすすまない、先が見えないといったことは多々あります。そうしたときに大事なことは原点に立つということではないかと思います。
 原点は、水俣病によって死亡された方々、生きながら苦しみ続けてこられた方々の立場に立つということであり、そして加害の罪を償うということではないでしょうか。
 1月28日、ノーモア・水俣国賠訴訟原告団・弁護団は、声明を明らかにし、与党PTの方針に添った、認定申請者・保健手帳交付者に対象を絞った調査については、「受け入れることは出来ない」との態度を明らかにしました。他の2団体も同様な態度を明らかにしています。いま国、県がやろうとしていることは、結果として、水俣病患者・被害者に、不必要なクサビを打ち込み、新たな混乱を持ち込むものです。現にそうした事態が生まれています。
先の原告団・弁護団の「声明」は、行政の対応について「最高裁判決を無視し、安上がりの政治決着を患者に押し付けること」と指摘し、不知火海沿岸住民の健康調査の実施、最高裁判決を踏まえた、すべての水俣病被害者の救済を求めています。
 各論、具体例について結構ですので、知事の心境、思いをうかがいたいと思います。

潮谷知事
水俣病問題について私の思いを問われるとしますならば、一言で申し上げてショックの連続である、このように申し上げてよろしいと思います。私自身の初期の状況の中で、女と子を結ぶ命の絆である胎盤―これが水銀を通したということで、慟哭する親の存在があります。さらに、「もしあんたが人間やったら立ちなはれ。たたかいなされ。公害戦争や。水俣病戦争やで」こういうフレーズのなかで怒りと対立と偏見の中にある、すさまじい水俣病のみなさんたちの姿。そして平成11年から副知事に就任いたしました。その中でショックを覚えましたことは、実は、県も水俣病にしっかり対峙しなければならない存在であるというショックでした。また、関西訴訟最高裁判決を通して加害者であるというその立場への認識、このことも私にとりましては、大きなショックでありました。議員が先程ふれられました様に「未来への提言」この中で実は水俣病でいらっしゃるその当事者がこのようにおっしゃいました。「責任所在が制度・政策システムの中に埋没しているのではないか。市場化してしまっているのではないか」生命共同体として、あるべき自治の精神を喪失させ、物の豊かさを求める風潮は、命の賑わいを感じなくなっている。これをとりもどし、命の感動を得ていく自治の姿勢こそ水俣病発生から50年、チッソが水俣に来て100年という節目に考えなければいけない大きな歴史認識ではないか、まさに、「水俣病を考える歴史のターニングポイントに我々はある」というこのような位置づけの中で、自治これが問われたことも私には大きなショックでございました。
こういったショックの中にありながら、現実には被害者の方々が精神面や健康面で様々な苦しみに耐えていらっしゃることに対して責任を問われた立場として、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 それとともに水俣病の様々な問題を被害者の方々とともに背負い、必死になってこの問題に向き合うことの大事さも改めて感じています。
ただその中で、県議会の皆様方が真摯に一貫して、対応していただいたこと。ご自身の役割の大事さの中で執行部とともに国に足を運んでくださった、水俣病対策に関わる多くの方々の存在―それはどれだけ多く私を力づけたかしれません。しかし、一方で救済のあり方についても被害者の方々の中に、様々な意見があります。これらの思いをひしひしと感じ、苦悩しています。それをふまえて、県としてどう対応していくのかーこれがするどく問われている現状の中にあります。重みに苦悩して手をこまねいていることは許されない。目の前には、たくさんの認定申請をしている方々がございます。その方々の中には老いた方もいらっしゃいます。自分が水俣病であるかどうかハッキリさせたい。このような思いの方もあります。残された老いの期間の中で、認定を受けたい子のように願ってる方もいらっしゃいます。認定審査会の早期再開に努めてきた所以でもあります。救済策の実現については与党プロジェクトチームで検討されてるところですが、新たな救済策については早期に実現したいという思いで、ねばり強く取り組んで参らなければならないと思います。実態調査については、様々な意見がこれもございます。けれども、救済策を検討するにあたって必要なものと、このようにプロジェクトチームでは位置づけられております。可能な限り申請者の皆様たちにご理解を得ながら、国と連携してとりくんで参らなければならない、これが私の現状に対する認識でもございます。
救済策については、大きな課題がまだまだ残されております。けれども一日も早い救済を求める被害者の方々の声に向き合い、その思いにこたえていくために、これまで以上に県議会のみなさま方がたのご支援をいただきながら何とか新たな救済策が早期に実現できるよう努めてまいりたい。この様に考えているところでございます。あわせて公式確認50年をふまえ、水俣病問題を検証する一環として県は今、国に求めている健康調査について、過去の調査の分析や今後の調査のあり方、こういったものを専門家を交えて熱心な論議をいただいているところでございますが、こういったことをもとにして健康調査を国に対しても協議をしてまいりたいとこのように考えております。


■松岡とおる
 水俣病の歴史を振り返りますと、チッソが水銀垂れ流していた。その水銀によって水俣病が引き起こされた。これをひたすらに、チッソは隠してまいりましたし、また発生・拡大の問題では、ある時期熊本県は、これを何とかしなければということで、国に伺いを立てたことがあります。その時、国は熊本県のこの要望を退ける、こういう態度をとったわけであります。あえて言えば、私は熊本県がこういった国の姿勢に追従したところに加害者の仲間入りをしてしまった、大きなポイントがあるのではないかと思います。先に紹介しました、原告団・弁護団の声明のなかでは、今国・県がやろうとしている対策について「昭和34年の見舞金契約と同様の批判を受けることになる」といった、厳しい指摘もなされております。
今知事が心情を申されましたけれども、塩谷知事をはじめ村田部長そして関係課のみなさんの大変なご苦労が水俣病の歴史の中で、あの悪評高い見舞金契約と同じような形で歴史に刻まれることがあってはならないと私は思います。
 そういう意味では今度こそ、国への追従姿勢を改めて、加害者のしばりから根本的に脱却して、患者・被害者のみなさんとともに歩んで水俣病を解決する。こういったことで、いろいろ大変な問題がありますけれども、今の状況というのを歴史的・総合的に分析して、戦略を練り直して、熊本県は役割を果たしたということが、水俣病の歴史に刻まれるように、残されるように頑張っていただきたいと思います。

川辺川ダム問題
■松岡とおる
次に川辺川ダム問題について、知事に伺います。
いま川辺川ダムは、その目的の一つである利水が破綻をし、発電もどうなるかわからない状況に至り、事業の必要性が根底から揺らいでいます。しかし、国土交通省は、「球磨川の治水には絶対にダムが必要」という姿勢に固執しています。球磨川水系河川整備基本方針検討のための小委員会における審議の内容と経過は、まさに「なりふりかまわぬ」といえるもので、基本高水流量計算における降雨継続時間の問題、「基準点」については、いきなり八代をはずし、またいきなり復活させ、数字は全く違うものをまただしてくる、人吉の流下能力の審議も不透明なまま、そして河川法では、河川整備計画の段階で審議の対象になるダムを持ち出し、無理やり審議する、そればかりか、またまたいきなり「穴あきダム」というのを持ち出してくるー国土交通省を代弁する元河川局長の近藤委員長のもとでの小委員会の審議は、納得しろといわれても、納得の仕様がないほどのひどいものであると言わなければなりません。
 そこで知事に伺います。
小委員会の審議に参加され、どのような認識をお持ちでしょうか。また国交省は、県の要請に対して、県民に説明すると回答しておりますが、熊本においては、住民討論集会の経験と蓄積があります。国交省が、一方的に日程も設定し、説明するといったやり方では、意味はないと思いますが、この点で、今後どうされるか、出来るだけ簡潔にご答弁をいただきたいと思います。

潮谷知事
検討小委員会での審議についてですが、いま議員もおふれになられましたように、基本高水等の算出にあたって、科学的に解明されていない部分や経験にたよる部分が多いこと、さらに人吉地点に加え、八代の横石地区を基準地点に追加するという議論の中で、横石地点の安全度が100分の1に変わりました。本当に二転三転という様な、議論がなかなか見えがたいという状況のなかにありました。私が単に、素人だからこの妥当性を理解しづらいというようなことだけではなくて、誰がお聞きになられてもこのプロセスは、理解しづらい部分であると、この様に思っております。さらに、河川法に照らしますと、具体的な洪水調整施設は検討小委員会段階で検討する事柄ではありません。にもかかわらず、川辺川ダムを前提とした、審議に多くの時間が費やされており、流域全体の河川環境の現状および課題、今後の保全の方向性等の議論が十分尽くされたのか、という思いをもっております。こうしたことから、県民の理解が得られるかどうかについても疑問があると感じているところです。
こういった観点から国土交通省に対しまして、これまで小委員会で取りまとめられた内容について、その審議過程を含めて県民に対する説明責任を果たしていただくよう求めてきたところでございます。県の要請に対しましては、先月末に、国土交通省から、文書回答がございました。その中で関係住民への報告会を行う旨の考えが示されております。しかし、その具体的な時期や手法等については、九州地方整備局に指示して検討させるという内容にとどまっております。今後、国土交通省において、県民への説明を実施される際には、県民からの質問や意見に対してもわかりやすく説明をおこなうなど、双方向性に配慮したもち方であっていただきたいとこのように思っております。


■松岡とおる
 小委員会というのは、本当に誰が記録を見ても分からないほどの混迷といいますか・・・きっちり県民が納得できるような説明をしてもらうし、またきちんと住民討論集会の経験蓄積もありますので、議論をしてことの真実に迫っていける場が必要だと・・・。わたくしはそういった点で、治水についていくつかふれたいと思います。
 国交省は、球磨川の治水にダムが絶対必要であるといっています。しかし、本当に必要なのか?国交省はダムの効果については説明しますが、マイナス面ですね、ダムによる治水の脆弱性とか危険性といったことはまったく言おうとしない。
 ダムに頼る治水の危険性、脆弱性については、昨年7月の川内川水害と鶴田ダムの実態を直視する必要があります。先日、NHK九州沖縄金曜リポートが、この問題について放映しました。現地で行われている、住民説明会のなかで、住民からが「津波のような濁流が押し寄せた」との発言が紹介され、すさまじい鶴田ダムの放流の状況が映しだされました。小委員会の委員でもある小松利光教授が番組に出演し、「想定外の雨が降った場合は被害は避けられない」「ダムも限界がある」と発言していました。
パネルをご覧下さい。


小松教授がいうダムが機能しない場合というのは、想定外の計画規模を上回る洪水や、計画規模内であっても長期間降り続く洪水、また、ピークが2つ以上あるような洪水の時には、ダムが満杯となって、ダムの決壊を防ぐため下流に「そのまま放流」してしまうことになります。
下流の河川の断面は、ダムの洪水調節を前提としてつくられていますから、下流では大洪水になってしまいます。
 鶴田ダムの洪水調節計画では、ダム流入量4600dのうち2200dをダムでカットし、下流へは2400d流す計画となっています。しかし、実際は、ダム流入量は計画量より少ない4042dであったが、放流量は、計画をはるかに上回る3571d。だから、先程ももうしましたように、津波のような濁流が押し寄せてきたということになります。
これを川辺川ダムに当てはめてみますと。
パネルをごらん下さい

 たとえば、相良村の柳瀬地点は、計画高水流量1400dに対して、しかし基本高水流量は3500d。大洪水が襲うことになる。まさに、川内川水害のような「津波のような」洪水となってしまうわけです。
 では、最初から、ダムを選択せず、改修工事によって、ダムに頼らない治水工事を行っていればどうか?ダムにつぎ込む予算と時間があり、基本高水流量に耐えられるような河川の改修をしていれば、被害は発生しないか、最小限にすることができます。
 1982年(昭和57年)7月25日洪水で、人吉では戦後最大の観測流量5400dが記録されています。
この時のことを、1996年、H8年の川辺川ダム事業審議委員会では、「5400dは『余裕高』を使って流れた」と説明されています。堤防高(満杯)の場合の流量については、「1995年・平成7年度球磨川河道水位検討業務報告書」にあります。この報告書では、人吉特殊堤区間の堤防天端高での現況流下能力は、旅館や商店街が集中する右岸で最小5400d〜最大6300dとなっています。
 もし、河川で流すことを基本に据えるならば、知恵も工夫も出てくるはずです。
 パネルをごらんください。 
 

 河川改修の事例としては、大淀川河畔の特殊堤嵩上げがあります。既設護岸を1.2mも嵩上げしたうえで、観光地にふさわしい景観を達成しています。現代の技術力を持ってすれば、人吉のいまの黒ずんだ護岸を、強固で、美しい護岸に改修することは不可能ではありません。
 ダムを前提にすれば、ダムの効果分は差し引いて河川整備が行われます。ダムに過大な期待を寄せ、河川改修を放置した結果、大災害になった川内川では、これから、さらにダムの治水容量を増やすために400億円、河川改修に400億円も投入しなければならないようになっています。
 ダム問題であと一点のべます。昨年9月議会で、川辺川ダムと県財政についてとりあげました。総務部長は、ダムの事業費2650億円ベースで、利息を含めると県のこれからの負担は、160億円余がみこまれ、交付税措置も不透明と述べました。先日の地元紙の連載記事でのインタビューで、事業費3300億円と明言しています。県負担はさらに、利息を含めると170億円ほど負担が増す。関連事業を含めると400億円をこえます。
 立野ダムについて、国会を通じて調べました。ダムをつくるとなれば、いろいろ新しい技術、構造のことなど検討しなければならず、あとどれだけかかるかわからないということであります。仮に300億円となれば県負担は、75億円ぐらいなるでしょう。川辺川ダムと合わせて、500億円近い新たな負担を、ダムだけで負担すればどうなるか、待ったなしの新幹線工事があります。福祉、くらし、教育、身近な必要な公共事業など何もできなくなるではありませんか。
 議員のみなさんも川辺川ダム問題では、立場を超えて力を合わせようではありませんか。

貧困と格差の拡大と県政について
貧困と格差の拡大と県政についてであります。この問題は日本の大きな社会問題になっております。NHKが2度にわたって「ワーキングプア」の特集番組を組みました。この番組のキャスターを招いてのシンポジウムがテルサで先日あり、私も出席しお話を伺いました。まじめに働いても生活保護水準以下の生活しかできない世帯が、10世帯に1世帯、400万世帯を超えるということであります。貧困というのは一部の国民の問題ではなく、国民の誰にも起こりうるものとなっており、年齢や階層の如何を超えて日本社会全体に広がっています。

日本共産党が熊本市内で「市民アンケート」というものを実施いたしました。基本的には全世帯に配って、受取人払いで送ってもらうということだから、広い聡から回答がきているんです。年明けから配って、今2200を越えています。1500の集計まで出来ているんですけれど、その結果を紹介しますと「構造改革で暮らしはどうなりましたか」というので「悪くなった」というのが79%、「変わらない」というのが19%、「よくなった」というのは1%ですね。その悪くなった理由は「増税」が28%、「年金が減った」が23%、「医療費の負担増」が22%。こういうような状態になっています。

これは熊本の民主医療機関連合会のみなさんがそれぞれの院所で65歳以上の方に行った「医療・介護生活実態調査」の結果ですけれども、「不安がある」というのが6割ですけれども、その不安の中身が「自分の健康」が26%、「家族の健康」が16%、「生活のための収入が足りない」が12%。やっぱり健康・医療の問題で今非常に不安感が高まっていると思います。

青年のみなさんが行った、雇用・結婚・子育てについてのアンケートでは結婚への躊躇・不安では、一番多いのは経済的困難だということがでています。

生活保護は13年連続で増え続け、05年には100万世帯を超えています。
貧困と格差の拡大について、あげればキリがないわけであります。
知事は、「県民中心の県政」「県政は未来からの預かりもの。県民からの預かりもの」との基本姿勢を明確にされ、「21世紀は、人権の世紀、高齢者の世紀、環境の世紀であり、ひとり一人の人間としての尊重が求められる時代」との認識を示されて、「福祉をライフワークとして歩いてきた」者として、そこからえたものが」「自身の人間観、あるいは政治観、あるいは世界観を形づくっている」との述べてこられました。
 私は、この知事の基本姿勢と信念に基づく政治、私流に言い換えれば「福祉のこころを県政に生かす」ことが、いまこそ求められていると考えます。
 知事の基本的なお考えを伺いたいと思います。

潮谷知事
いざなぎ景気をぬいて、戦後最長といわれる、好景気も地方においては、実感を伴わず日常生活の中では、むしろ所得格差や地域格差が拡大しているという感覚が県民の中に存在していることを私も感じております。単に格差の拡大が問題なのではなくて、そのことが県民の日々の生活や将来の生活への不安の増大につながっていくことこそが大きな問題であります。中でも高齢者・障害者の方々の中には昨今の急激な制度改正等もあって、いっそうの不安の声が増大している。このように感じております。しかも平成19年度の社会保障費の状況を見てみますと、社会保障費は2,200億円の削減が今国会に提案されておりまして、年金・医療・福祉・労働等といった生命につながる領域が切られそうになっております。県としてはそういった県民の不安を払拭できるようきめ細やかな施策を充実させ、全ての県民が安心して豊かに暮らせる地域社会の実現にむけて、全力をあげてとりくんでいかなければならないと、このように考えております。ただ国から出されてくる施策、これは平均像でございます。熊本の立場からこういった施策を考察いたしますときに、足らざるところを補う、この姿勢と責任。これは非常に大事であると思いますし、さらに基礎自治体にもこの役割を果たしていくという視点が大事だと思っております。県民ニーズは多様化してきております。その中で役割と責任の明確化。NPO・ボランティアそういった方々とパートナーシップを組みながら貧困と格差是正、こういったことに私どもが取り組んでいくといったことが大事だと考えております。ただこうした考え、これは経済との関係が密接でございます。この実現のためには、経済の底上げが必要、このように思っております。
私は、他の県で命を得ました。しかし、熊本県を愛するこのきもちは、誰にも負けてはおりません。知事に就任以来、私は、愛する熊本県のために、責任をもった舵取り、このことの必要性を考えてまいりました。基本となります、「産業の元気づくり」に取り組み、県民の雇用と所得の確保を目指してまいりました。そのことは、税財源の涵養につながる、ひいては県民生活の向上につながる、県独自の取り組みにもつながるものと思っております。その上で、県民生活のあらゆる分野にわたり社会全体で総力をあげて、支えあうこの姿勢が必要でありますし、「県民中心」の視点で県政をすすめ、誰もがくらしやすい社会づくりを目指すこと、それがまさに、県政の基本でありますユニバーサルデザインの考え方そのものであります。私が、これまでつらぬいてきたこの姿勢は今後も揺らぐことはありません。今後とも、県民や議会のご理解のもとで、地域に活力があり、県民が未来への希望をいだくことのできる元気であかるい熊本の実現にむけて積極、果敢に取り組んで参りたいと考えております。

■松岡とおる
  地方自治法の第1条の2項−は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」としています。この立場をしっかり堅持して、県政運営にあたっていただくことを願います。


経済の問題等の関係でちょっと述べますと結局要因を挙げるとするならば2つあると思います。1つは所得の再配分がちゃんとなされてない。つまり税や社会保障がその役割を果たしていないばかりか、むしろ痛みを押し付けるようなところに役割があるということになっている。もう1つは規制緩和万能論のもとでですね、雇用と所得が非常に壊れてきている。ここのところがやっぱりベースにあるわけです。いわば企業が儲けたらトリプルダウンでやがて下に落ちるというそういうあり方・時代はもう通用しないというのが、現実の展開なんですね。ですから、私が申し上げた2つの点をしっかりふまえて地方自治体らしい政策展開をやっていただきたいと思います。
 次に、各論いついて、教育庁、商工観光労働部長に伺います。
 まず教育長に伺います。
 就学援助についてです。この制度が、いまの社会経済状況のなかで、憲法26条、教育基本法、学校教育法に照らして、重要性をましており、一般財源化されたことにより、市町村間の格差が広がったり、中身が悪くなるようなことにならないようにすべきだと考えますが、いかがですか。また「経済的な理由」で就学困難なこどもをなくし、教育の機会均等を保障するのが就学援助制度でありますので、その認定は所得で、公平・客観的にし、誰もが気兼ねなしに申請し、支給方法も改善していく必要があると思いますがいかがですか。
 
教育長
まず、就学援助の役割についてでありますが、県内の児童・生徒数に占める認定者数の割合が増加傾向にあることから、児童・生徒の教育の機会均等を図るうえで、就学援助の役割はますます重要となっていくと考えているところでございます。平成17年度から就学援助に関わる
市町村への国庫補助金の一部一般財源化されましたが、県教育委員会では、就学援助の実施主体であります、市町村教育委員会に対しまして、就学援助が適切に実施される様、助言しているところであります。今後も毎年、各市町村の認定基準を把握し情報提供するなどして、就学援助の充実にむけ、はたらきかけをしてまいりたいと考えております。次に、就学援助に関わる申請手続きでありますが、申請しやすい環境をはじめ、認定事務が公平かつ客観的に行われることは事務処理を行う上できわめて重要なことであります。当該事務は市町村教委の所管でありますが、県教委といたしましても、各市町村での就学援助事務の実態を調査し工夫例や実践例などについて情報提供を行うなど側面から支援してまいりたいと考えております。


■松岡とおる
 次に商工観光労働部長に伺います。非正規雇用、派遣労働、請負労働の実態調査はやっていますか。青年雇用についての実態把握と対策はいかがですか。誘致偉業における労働の実態はつかんでいますか。
 
商工観光労働部長
労働雇用問題についてでありますが、まず非正規労働者に関する実態調査につきましては、総務省の「就業構造基本調査」等が実施されており、平成14年調査で県内の非正規雇用者は全雇用者の31.6%にあたる約20万8000人にのぼっており、そのうち約75%はパート・アルバイトであります。最近の状況については、本年度実施される就業雇用調査等を活用して把握して参りたいと考えております。次に青年雇用をめぐる状況についてでありますが、全国的には新卒者をはじめ若年者の就職状況は改善傾向にあります。しかしながらいわゆる年長フリーターと言われる25歳以上の者については、正規雇用への移行がすすんでいないことから、国は再チャレンジ支援の一環としてフリーター25万人常用雇用化プランを推進、年長フリーターを対象とする実践的な訓練等の支援を実施しております。県としても国と連携し、職業訓練やきめこまやかな就職相談によるミスマッチの解消等に取り組んでまいります。次に誘致企業における非正規雇用者の実態調査についてでありますが、誘致企業にしぼった非正規雇用、派遣・請負労働等に関する調査は行っておりません。先に述べたとおり県全体の非正規雇用や若年雇用の状況は各種統計等を活用して、実態を把握して参りたいと考えております。
次に最低賃金につきましては、厚生労働大臣または都道府県労働局長が最低賃金審議会の意見を聞いて設定するものであります。県は労働経済情勢等につきまして各種情報提供をおこなっており、今後の改定をめぐる動きを注視していきたいと考えております。


■松岡とおる
 次に、大型店問題です。ニコニコドー南熊本店、サンリブ水前寺店の撤退、東京の業者による長嶺西地区への小売り店舗を中心にした大型複合店舗の進出にみられるように、せっかくつくった「ガイドラインが」の機能が、1万u以下ということで果たせない事態が明らかになっています。「ガイドライン」をもっと実効性のあるものにみなすべきではないかと考えますが、いかがですか。
 答弁を受け、その内容によって、再質問をいたします。

商工観光労働部長
ガイドラインでは、1万u以上の特に規模の大きい大型店は、広域的に影響を及ぼすことから具体的にルールを定めて、積極的な地域貢献の取り組みを求めております。また、地域貢献活動は店舗の規模に関係なく取り組むことが期待されることから、1万u未満の大型店に対しましてもガイドラインの主旨を踏まえた自主的な取り組みをうながしてきております。
なお、1万u未満の大型店については、地域の実情に応じて対応することが適切であるという考えの下に、前向きな対応を市町村にお願いしてきたところでありますが、その結果、独自のガイドライン策定等、積極的に取り組む市町村の動きも出てきております。県としては、来年度から開度ラインに基づく取り組みについて、外部評価を導入する予定でありまして、ご指摘の点も含めまして、様々な意見をいただきまして、市町村独自のガイドライン策定の動きも見極めながら、より良いガイドラインとなるよう改善に取り組んでまいります。


■松岡とおる
最低賃金は国の問題ということだけれども、熊本はご承知の通り612円なんですね。月収は10万7470円なんです。これでね結婚、子どもを生み育てるという展望が出ないのは、当然だと思いますね。ですから注視するんではなく、熊本県は熊本県として、もっと国に働きかけていくと、いろいろなものを打ち出していくということが望まれると思います。正規・非正規の場合、特に青年の問題が深刻で、最後のパネルですけれども、これは、政府のデーターなんですけども20代の場合、正規の場合367万7000円、非正規は114万円なんですね。これが全国的なデーターなんです。問題は、その中で、20代の人たちが、10年先の将来の雇用状況についてのアンケートに85%の人が正規になりたいと回答している。ですから、こういう点をしっかり県としても頑張っていただきたい。次に誘致企業の問題ですけれど、私は企業誘致を否定しているわけではもちろんありません。また、熊本県が、正規雇用や地元雇用や、補助金の出し方についてもやはり努力しているのも承知しております。ただたとえば、菊陽町にあるソニーの場合、出るとき10億円だして、菊陽町も5億円だして、またこれからも規定に応じてだしていくわけですけれども、地下水だって町の一日分の4分の1に匹敵する量をくみ上げているわけですね、ですからやはりそういう意味では、企業の地域貢献とか社会的責任というのは、これはこれで求めていくのは当然と思います。
それで部長ちょっと伺いますけども、菊陽にあるソニーセミコンダクター九州の申し上げたような労働の実態とかいうのは、つかんでおりませんか?これからどうする予定か簡単にお願いしたい。

商工観光労働部長
先程もお答えしましたが、ソニーセミコンダクター九州をはじめといたしまして、誘致企業のみにしぼった、非正規雇用・派遣・請負労働の条件に関する調査はいたしておりません。


■松岡とおる
国会で日本共産党の市田初期局長が、偽装請負問題をとりあげた質問をやりまして、そのときにクリスタルグループがでてきまして、日本の大手企業を対象に偽装請負をやっている問題がとりあげられたんですね、その時の資料にですね、100人以上クリスタルグループから提供を受けている企業の中にソニーセミコンダクター九州がありまして、245人の派遣を受けていることが出ているんです。実態としていったいどういったものになっているのか。ちゃんと1年過ぎたら直接雇用にしますというのが、企業から要請されているのかというのがあるんですね。熊本県にもらった資料では、ソニーは2840人という従業員数だけど、私が調べたところでは2900人ということでした。正規雇用800人で非正規雇用が2100人ですよ。72%が非正規。そうしますと、非正規の場合さっきデーターを示しましたように、正規の3分の1の賃金で働いているわけです。これはね、やはり熊本の経済という面からもきちんと明らかにしていく取り組みが必要だと思います。確かにそれは県としての権限という問題があるけども、国ともっと蜜に連携してどういうことができるのか、というのをやっていく必要がある。安倍総理大臣は国会の答弁のなかで、「いわゆる偽装請負等につきましては、法令、労働基準法に反しているのであれば、適切に厳格にこれは対処していかなければならない」と答弁しています。それから3月1日には、厚生労働省から「派遣の切り替えではいけません。直接雇用に切り替えるよう厳正に指導しなさい」という通達も出ているわけです。
私が調べたところでは、京都府では、知事が、派遣労働者の実態調査を表明しています。徳島県では、県が立会人になって、日亜化学の請負労働者1600人を対象に、直接雇用、さらには正社員化していく方向が確認されています。ですから国が国がといわなくて、県民のとりわけ青年に関わる大事な問題がはらんでいるわけだから、そこのところは、国と連携して県がもっと主体的に関わってこういった問題を解決していかなくてはならない。このことを重ねて強く求めます。
 
 同和問題について、環境生活部長、教育長に伺います。
部落解放同盟、同和会への補助金は、来年度予算でいくら組んでいますか。使い道の調査をちゃんとしていますか?
 また、教育長については、昨年9月議会で、「部落差別は拡大再生産されている」といった全く実態にそぐわない、県の「同和教育基本方針」についての廃止を求めました。教育長は、「見直していく」と回答されましたが、どうなっているでしょうか。

環境生活部長
同和問題の早期解決を目的といたしまして、関係団体に補助を行っておりますが、平成19年度においては、部落解放同盟熊本県連合会に2000万円余、全日本同和会熊本県連合会に1500円余を補助することとしており、あわせて県の行財政改革基本方針に沿って削減についても取り組む考えでございます。また補助金の使途については県の補助金等交付規則に基づきまして、実績報告書の提出とともに関係帳簿等の検査を実施し確認を行っております。


教育長
熊本県同和教育基本方針につきましては、平成17年の9月議会で答弁しましたとおり一部現状にそぐわない内容が見られると認識しておりまして、今後早い段階で熊本県同和教育基本方針に代わる新しい方針の策定に向けて検討してまいりたいと考えております。


■松岡とおる
会員が14万2000人の県PTA連合会への補助金は75万6000円です。会員18万4000人の県老人クラブ連合会へは140万8千円です。同和会関係、知事部局・教育委員会を含めますと5365万円にもなる。開放同盟は以前のデーターでは32支部1200世帯に過ぎない、そこに3000万を超える補助金がある。これを不公平・逆差別といわずなにをいうのか。この件は、今後ともきびしく追及していきます。県としても決断を持ってのぞんでいただきたい。
学校の先生は過労死ラインぎりぎりで働いていらっしゃいます。その上、旧同和地区では勉強会に行かないといけない私が調べたところでは年間のべ菊陽町では1220人、大津町489名がこの勉強会に夜行っている。こういった実態の根本にあるのが同和対策基本方針です。そこのところをきちんとただしていただきたい。

安心してこどもが生めるような、周産期医療の抜本的な体制強化または、その要になります医師体制の強化について提言するようにしておりましたが課題の提起だけにとどめさせていただきたいと思います。

 以上で一般質問を終わりますが、今日の質問を通じで県政の場でますますがんばらにゃいかんと痛感いたしました。当面に試練を乗り越えるべく、頑張る決意を述べまして、そしてまた知事をはじめ執行部のご協力、そして議員の皆さんご協力にお礼を申し上げて質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。



日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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