質疑・討論の主な内容
2005年 6月定例会 6月30日

障害者自立支援法案に関する意見書についての提案理由説明


障害者自立支援法案に関する意見書について

今国会に提出されている「障害者自立支援法案」は、これまでの制度の全面的改定とも言えるものであります。にもかかわらず、あまりにも短期間にことが決められようとしています。制度改革の具体的な説明が障害当事者に十分に行われないまま、その意見をしっかり反映することもなしに、国会での審議が始まりました。
同時に、施策の実施主体になるとされている市町村に対しても、法案上程後の2月17日になってはじめて、全国主管担当課長会議で正式な説明がなされるといった具合です。
そうした事情を踏まえて、法案の審議にあたっては、障害当事者とその家族及び実施主体である各自治体など関係各方面の意向を踏まえながら、その意見・要望を十分反映させるよう時間をかけて検討することを求めております。
次に、「自立支援法」においては、これまで障害者施策で維持されてきた「応能負担」を、「応益負担」および「食費等の自己負担」という仕組みに転換し、障害者に大幅な自己負担増を強いるものになっています。
たとえば障害者が家事援助や身体介護、移動介護などホームヘルプサービスを利用する場合、現在は利用者の95%が負担ゼロとなっていますが、法案が成立した場合、厚生労働省の試算では、約1000円から約4000円へ、4倍の負担になるとされています。
また、障害者が通所施設や入所施設を利用する場合も、現在通所施設利用者の95%が負担ゼロになっていますが、法案が成立した場合、同試算では、約1000円から約19000円へ、19倍もの負担増となることになります。
また、育成医療・更正医療・精神障害通院費公費負担として、これまで公費の医療保障がなされていた制度が、今回の法案では「自立支援医療」として一本化され、加えて原則一割の定率負担が導入されます。これにより、ペースメーカーの埋め込みが必要な心臓障害や人工透析が必要な腎臓障害をもつなど生命にかかわる障害を持つ様々な方にとっては、サービスの自己抑制、受給抑制を余儀なくされ、生命の危険すら招く内容となっています。
福祉・医療サービスの利用に対する「応益負担」制度の導入は中止するべきです。
低所得対策対象者の認定について「同一生計」の収入で判断するとされています。03年より20歳以上の障害者に対しては、親、兄弟姉妹の扶養義務をはずすとされましたが、配偶者や子どもは対象外として残されています。様々な障害を乗り越え結婚をし、配偶者に利用負担がかかるということは障害者にとっては耐えられるものではありません。同一生計の考えはこうした切実な個人の尊厳を求める声に逆行する実質的な扶養義務強化といわざるを得ません。
障害者世帯は、多くの場合、その介護のために世帯収入が制限され、また障害ゆえの特別な経費が、家計の大きな負担となっています。成人障害者の多くは障害が重ければ重いほど働く機会も少なく、その収入の多くは年金に依存せざるをえないのが現状です。 
「同一生計」の考え方を改め、社会参加や社会経験の拡大、家庭生活支援、障害児の地域療育機能の確立、障害児学童保育など子育て支援等を含む「障害児者の総合的な社会的支援」の制度設計・確立こそが急がれる課題であります。
今回の法案の背景にあるのは財政論です。03年から始まった支援費制度開始に伴い制度活用の急増による予算不足、「三位一体改革」の流れの中、施設整備費補助金などの国庫補助金の廃止や公費医療など高額補助金の一般財源化ということで生じた2重の財政圧迫のつけを、障害者と家族に求め、人権をないがしろにする制度改悪が許されるものではありません。
障害者施策の実施主体が、これまでは各福祉法によって都道府県と市町村に分かれていたものが、市町村に一元化されることにより、市町村間格差が助長される懸念が広がっています。また、市町村にとっては、三位一体改革による財政保障が不十分な中でサービスの低下が危惧されています。
今必要なことは、指摘した諸々の問題点について、憲法25条に規定された「生存権」を保障するという立場、「公的責任・無差別平等・必要十分」の福祉三原則に基いて改善をはかることです。障害者と家族、障害者団体の切なる思いがたくされております。その思いは請願にもたくされておりました。ご賛同のほどよろしくお願いいたしまして、提出者としての説明を終わります。





日本共産党熊本県議会議員 松岡徹
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